五月二十八日早朝、テレビから「バグダッド郊外で日本人ジャーナリストが襲撃された模様。詳細は不明」と聞こえてきた時、咄嗟に橋田さんだと確信した。というのも、あの時期のイラクの戦場で取材しているような日本人ジャーナリストは彼以外に考えられなかったからだ。その後の展開は、誰もが知っている。 戦場に斃れた還暦過ぎのジャーナリスト、悲惨な現実を前にたじろがない遺族。同じ戦場を舞台にしながら後味の悪さだけを残した二組五人の人質事件があっただけに、現場にこだわるフリージャーナリストの潔さと未亡人の凜としたすずやかさ、いわば「覚悟」と「志」の気高さに、多くの日本人は衝撃を受けたはずだ。
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