「華氏911」の波紋

2004年9月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 現職のブッシュ大統領が再選に失敗するようなことがあるとすれば、その敗因の一つにドキュメンタリー映画「華氏911」の公開があげられるだろう。マイケル・ムーア監督が「ボウリング・フォー・コロンバイン」に続いて放った話題作は、米国に続いて今年中に全世界で公開される。その反響の大きさは、単に映画としての評価うんぬんを超えて、米国ばかりか他の国、とりわけイラクへ軍隊を送っている米国の同盟国の国内政治を揺さぶることになる。 日本での一般公開(八月二十一日)に先だって、試写でこの映画を見た。米国ではこの映画が大統領選にどの程度影響を与えるかについていくつかの世論調査が行なわれている。その結果は、さほど影響はない、というものだった。それはこの映画が「ブッシュ批判」で貫かれていることから、ブッシュ支持者は見に行かず、見るのは「反ブッシュ」の人々に限定されるという分析からだ。今回の選挙はブッシュ支持、不支持ではっきりと世論がわかれており、いわゆる無党派層は少ないと見られている。 米国ではそうかもしれない。しかし、米国以外の国々で、この映画が及ぼす影響の大きさは計り知れないように思える。とりわけ、自衛隊のイラク派遣、多国籍軍参加を「仕方がない」と消極的肯定で受け止めている向きの多い日本では影響が大きいだろう。特にイラクで死んだ米兵の家族が「どういう目的でこの戦争が行なわれたのかわからない。息子は何のために命を落としたのか」と嘆く場面は、テロを防ぐことが戦争目的と漠然と信じていた平和な国日本に住むわれわれを揺さぶる。

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