インテリジェンス・ナウ
インテリジェンス・ナウ

ワシントン政治に翻弄される「CIA長官」というポスト

春名幹男
執筆者:春名幹男 2004年9月号
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 それは感動的な半面、仮面舞踏会のようなムードの奇妙な式だったのではないか。 七月八日、ワシントン郊外ラングレーの米中央情報局(CIA)本部で行なわれたジョージ・テネット長官の退任式のことである。 アレン・ダレス長官に次ぐ二番目に長い任期中、十一人ものCIA職員が殉職した。対テロ戦争を挟んだ難しく激しい時期だった。 約千五百人の職員を前に、妻と息子ら家族を横にしたテネット氏は上気した雰囲気で、人知れぬ要員たちの業績をほめ、感謝した。 あまり話したことのない、ギリシャ移民の両親、家族のことにも触れた。心臓外科医である双子の兄と毎週金曜日に互いの職業を交換するという冗談も紹介した。「兄はCIA長官をやれても、私は彼の患者に近づいただけで医療事故保険が急上昇する」と笑わせた。 来賓のロバート・モラー連邦捜査局(FBI)長官は「彼は私の愚直さに付け入ることもできたが、そうしなかった」とほめた。9.11テロで責任をなすり付け合ったとの噂などどこ吹く風だった。 ドナルド・ラムズフェルド国防長官も笑顔で「国防総省と情報コミュニティ間の連携を助けるという彼の任務は高く評価されている」とたたえた。イラク戦争前、フセイン政権の大量破壊兵器保有やアル・カエダとの関係をめぐる情報評価でCIAと国防総省は水面下で“神経戦”を戦ったが、そんな後遺症は感じさせなかった。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
comment:0
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
逆張りの思考
価値あるバックナンバー
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
最新コメント
最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順