中国の「戦略的辺境」戦略について(上)

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2010年12月29日

 

最近、いくつかの中国関係の勉強会に出ていたら、奇しくも別々の場所で同様に「戦略的辺境」という概念について議論になりました。中国の積極的な対外進出の背後にどのような発想があるのか理解するうえで重要だと思いますので、何回かに分けて、自分なりに考えてみたいと思います。

なぜ中国は東シナ海や南シナ海に海洋進出を図るのか。なぜパキスタンやミャンマー、中央アジアに軍事拠点を築こうとするのか。私自身、このテーマで何度も記事を書いてきましたが、中国の真の「動機」について分かったようで分かっていない気がしていました。

「戦略的辺境」について日本の主要紙のデータベースで調べましたが、ここ10年間では一度も登場していません。まだ日本ではなじみのない言葉ですので、最初に大まかに説明してみます。

1980年代ごろから、中国内の軍事専門家の間で提唱されてきた概念で、最近の人民解放軍系のメディアなどで解放軍内の研究者らが盛んに使っています。国家が支配する領域は通常、領土・領海・領空で規定されますが、こちらは「地理的境界」と呼ばれています。一方、戦略的辺境は、国家の実力によって増減するもので、必ずしも領土・領海・領空に制約されず、総合的な国力の増減によって変化する、というものです。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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