中国の「戦略的辺境」戦略について(中)

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2010年12月31日

 中国の「戦略的辺境」という概念について書いています。

「戦略的辺境」は中国語で「戦略辺疆」です。中国語で「辺境」と「辺疆」は意味が違います。「辺境」は境界のことで、線です。「辺疆」は境界に接した僻地のことで、面を指します。

例えば新疆ウイグルの「新疆」は、「新しく獲得した僻地の領土」という意味が込められている。中国には「華夷思想」があり、華(中心)と夷(周縁)を分ける考えがありますが、「辺疆」には基本的にマイナスの響きがあります。一方、現代中国において「戦略××」という様に、「戦略」の二文字がつくと、重要度がアップグレードします。つまり、「辺疆」という無用の土地や領土、戦略という言葉をかぶせることによって意味を逆転させ、「今後は辺疆こそ重要である」と宣言しているわけです。

中国で海洋については、領海12カイリが「敵を防ぐ国門」とされました。事実上の国境防衛体制を敷いていたわけです。しかし、1980年代に入ると、戦略的辺境論が提起されるようになりました。発想の転換が行われたのです。同時に、国家が軍事的な支配力を及ぼす地域を「生存空間」ととらえるようになり、「生存空間」の境界である「戦略的辺境」を出来る限り、拡大していく方針を打ち出したと言われています。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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