公務員の争議権見送り?

原英史
執筆者:原英史 2011年1月11日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

 「公務員の争議権見送りの方向へ」との報道がなされている。
 もともと、現業以外の公務員は、労働3権のうち、団結権はあるが、協約締結権と争議権が制約されており、長く懸案となってきた。
 このうち、協約締結権は付与の方向(この通常国会に法案提出の見通し)だが、争議権については先送り、ということのようだ。
 
 この問題では、昨年12月、以下の文書が公開されており、上記は、この延長上と考えてよい。
・政府から「自律的労使関係制度に関する改革素案」(協約締結権付与の方向を示す)
・政府の懇談会で「国家公務員の争議権に関する懇談会報告」(争議権は先送りを匂わせる)
・民主党PTによる「労働基本権付与に関する基本的考え方」(以上と概ね同方向)
 
 筆者は、基本的に、公務員も民間並みの人事制度とすべきであり、その一環で労働基本権も付与すべきとの立場だが、ここでは、結論は別として、この問題を考える上での視点をあげておきたい。
 
 第一に、労働基本権を与えることの意味は何なのか。
 言うまでもないが、労働者側と使用者側で、自律的に、給与などの労働条件を決めていくことだ。
 菅総理らは、「労使で給与を決めるようになれば、給与を下げて、人件費削減につながる」と主張しているが、これは本当なのか? 昨秋の臨時国会で人事院勧告から一歩も踏み込むことのできなかった内閣が、労使交渉となった途端、タフな姿勢で労働組合に相対することができるのか・・・?? 疑問なしとしない。
 
 第二に、労働基本権の制約に伴う代償措置がどうなるのかも、あわせて要チェックだ。
 従来は、協約締結権と争議権が制約されていることに伴って、その代償措置として、人事院による給与勧告制度があった。いわば、労使交渉やストの代わりに、公務員を守る仕掛けとなっていた。
 仮に、今回の制度改正で、「協約締結権は付与、争議権は先送り」となった場合、依然として「完全に民間並みではない」ことを根拠に、何らかの代償措置が残されるのかどうか。場合によっては、従来以上に、公務員の労働条件が手厚く保護されることになる可能性もあろう。
 
 (原 英史

 

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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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