菅政権「政治主導の軌道修正」?

原英史
執筆者:原英史 2011年1月22日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 菅総理が「政治主導を軌道修正」といった報道が各紙に出ている。21日、各省の事務次官を官邸に呼んで訓示し、「現実の政治運営の中では、反省、行き過ぎ、不十分な問題が色々あった。プラスマイナスを振り返り、より積極的な協力関係を作り上げてほしい」と要請したそうだ。
 
改めて言うまでもないかもしれないが、何も今回はじめて、こうしたことを言い出したわけではない。
菅内閣が発足した直後の「基本方針」(2010年6月8日閣議決定)で、「政務三役と官僚は、それぞれの役割と責任の下、相互に緊密な情報共有、意思疎通を図り、一体となって、真の政治主導による政策運営に取り組む」と規定。いわば「官僚との協調姿勢」を明らかにした。
ちなみに、今回の改造後の「基本方針」(2011年1月14日閣議決定)でも、ほぼ同じ文言を踏襲している。
21日の訓示は、これと同じ趣旨と考えてよいだろう。
 
「基本方針」や「訓示」(報道で見る限りだが)で言われていることは、別に、「政治主導の軌道修正」というわけでもない。
そもそも、政権交代後当初、一部の政務三役らが、「官僚を一切排除し、政治家だけで政府を運営するのが『政治主導』」と考えていたのだとしたら(現にあったようだが)、そちらの方があまりに幼稚な誤解。
「緊密な情報共有、意思疎通」「積極的な協力関係構築」は、当然の話で、大いにやったらよいと思う。
 
ただ、問題は、「情報共有、意思疎通」をしているうちに、いつの間にか「官僚主導」になってきたのがこれまでの歴史。いかにして、「基本方針」にある「真の政治主導」を実現できるかが、問われるべきポイントだ。
結論から言うと、これは、当面あまり期待できそうにない。
なぜなら、「政治主導」の正統性の根拠は、国民からの信認。
選挙での約束違反で信頼を失い、支持率低迷に悩む政権にとって、主導権を握ることは難しいだろう。
国民の側も、今や、現政権に「政治主導」は期待していないかもしれないが・・。
 
(原 英史)

 

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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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