所管企業への天下りはさらに続く?

原英史
執筆者:原英史 2011年2月6日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

前・資源エネルギー庁長官が退職後4か月で東京電力顧問に就任、という話が国会でも取り上げられている。
新聞で報じられるとおり、政府側の見解は当初から、東京電力が本人の見識を買って再就職を打診したのであって、「役所のあっせん」は介在していない。よって「天下り」ではない、というものだった。
 
1月28日の参議院本会議で、いったん菅総理が「天下りでないとは言い切れないので、調べる」と答弁したが、2月2日には再び、枝野官房長官が「天下りではない」と会見で発言。元の鞘に収まった。
 
この人事が「天下りでない」というのは常識的にはよくわからないと思うが、民主党政権は一昨年11月(鳩山内閣のとき)、「天下り」とは「府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させること」をいい、「府省庁によるあっせん」がある場合に限る、という定義を閣議決定した(質問主意書への答弁書)。
 
そして、「府省庁によるあっせん」があったかどうかを、どうやって調べているかというと、法令上これを監視すべき役割である「再就職等監視委員会」を立ち上げていない(以前のエントリー参照)。
要するに、役所が「あっせんしていません」と言えば「天下り」ではない、というに等しい状態なのだ。
 
ちなみに、かつては、「退職後2年間は所管企業に再就職できない」という規定が国家公務員法に存在した。
この規定は、2007年の国家公務員法改正(安倍内閣時)で、「府省庁によるあっせんの禁止」と「再就職等監視委員会」などの規制を導入した際、これとセットで廃止された(上記規定廃止は2009年末に施行)。
(注)改正時の議論・経過の詳細は、もしご関心あれば拙著『官僚のレトリック』をご覧いただきたい。
 
ともかく、旧来のルールは消えてなくなり、一方で、新しいルールは監視役不在で実効性がない、という空白状態が生じていたわけだ。
 
2月4日の衆議院予算委員会では、柿澤未途議員(みんなの党)がこの問題を追及し、今後は「国交省河川局長がゼネコン顧問に」「厚労省医政局長が製薬会社顧問に」「総務省総合通信基盤局長が携帯メガキャリア取締役に」といったことが続出するのでないかと問い質していたが、結論として、政府の答弁はその可能性を否定しないものだった。
 
現在の菅内閣にとって、天下り根絶はもはやどうでもよい課題なのかもしれないが、ムダ遣いカット(天下り根絶はそのための重要な柱のはず)がほとんど手つかずのまま、いきなり増税論議というのは、かつて民主党が強く否定していた道だ。
 
菅総理は最近、「ムダというのは、永遠に新しいムダが生じる」と主張するようになった(1月27日衆議院本会議にて)。
この主張は、事実認識として否定はしないが、だからといって「ムダ遣いカット」を放棄したり先送りしたりする言い訳にされては困る。
「新しいムダ」が生じにくい体質に改める制度改革も必要なはずだ。
 
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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