フランス極右政党の不気味な足音

執筆者:渡邊啓貴 2011年2月9日
エリア: ヨーロッパ
国民戦線創設者のルペン氏(右)と3女のマリーヌ新党首 (C)AFP=時事
国民戦線創設者のルペン氏(右)と3女のマリーヌ新党首 (C)AFP=時事

 この1月16日、フランス中西部トゥールで開催されたフランスの極右政党「国民戦線(FN)」の第14回党大会で、同党創設者の3女であるマリーヌ・ルペン副党首(42歳)が3分の2以上の得票率をえて圧倒的勝利を収め、新党首に就任した。マリーヌは2回の離婚歴があるシングルマザーである。  今回の党首選挙は、1972年来FNを率いてきた、同党創設者ジャン・マリー・ルペン党首の昨年11月の正式な引退発表を受けてのことであった。マリーヌの勝利は彼女が父親の支援もあって、早くから世襲のための活動を始めていたことが最大の要因である。またマスメディアへの露出度も他の候補者を圧倒していた。昨年12月9日、党首選挙投票権獲得のための入党申し込み締め切り直前に放映されたフランス2の「判断するのはあなただ」というテレビ番組終了直後の数時間で2500名の入党申し込みが殺到したが、ほとんどがマリーヌを支持する人々であった。  若い頃は身体もふくよかで、父親張りの激しいアクションと大きな声での早口で論敵を圧倒しようという姿勢が彼女に攻撃的なイメージを与えたが、最近では痩せてルックスにも女性らしい柔らかな雰囲気が出てきた。前党首を支えてきた日本人妻をもつもう1人の有力候補、ゴルニッシュ副党首は惨敗した。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴(わたなべひろたか) 帝京大学法学部教授。東京外国語大学名誉教授。1954年生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校・ボルドー政治学院客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員教授、外交専門誌『外交』・仏語誌『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。最新刊に『アメリカとヨーロッパ-揺れる同盟の80年』(中公新書)がある。
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