クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

流血の鎮圧か妥協か

徳岡孝夫
執筆者:徳岡孝夫 2011年2月14日
カテゴリ: 国際 文化・歴史

 中東の国の首都には、どこにも同じ光景がある。私がバグダッドの大統領官邸を実際に見たのは50年近い昔で、官邸の主は後にサダム・フセインらに倒された男だった。だが、今も似たようなものであろう。  官邸の周囲には、二重三重に有刺鉄線が張られ、武装した兵士が警備している。車を3分も停めて眺めようものなら、険しい顔で「早く行け」と小銃を振って追っ払う。  日本の官邸のような、お巡りさんではない。攻められても、親衛隊が救いに来るまで持ち堪えられる武器を持って守っている。そしてもう1カ所、国営テレビ局にも同様の防衛線がある。    つまり中東の独裁国では、独裁者もそれを倒そうとする勢力も、1つの点で合意している。それは、「権力とは(物理的な)力なり」という1点である。権力の正当性や独裁者の正邪、統治力などは二の次にされ、腕っ節の強い者が権力を握り、握り続ける。  ムバラク大統領は辞任した。だが、チュニジアの市民革命から感染したエジプトの大騒動は、これを書いている時点でまだ結末が見えない。軍が今後どう動くか、即断しない方がいい。    私が見た限りの新聞では誰も書いていないが、私はエジプトの騒ぎを見てミャンマーの最近の「民政移管」を連想した。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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