南米諸国のパレスチナ国家承認と中東危機

執筆者:遅野井茂雄 2011年2月21日
エリア: 中南米 中東

 イスラムの文化社会的影響力は、征服したスペインを通じて中南米にもたらされたが、スペイン・ポルトガルの征服から500年、独立後200年を経て、中南米諸国はようやく独自の中東イスラム外交を展開し始めた感がある。だが中東での政変の広がりは、ブラジルを中心とする南米諸国の中東外交の推進に思わぬ障害となっている。

 昨年12月3日のブラジルに続き、アルゼンチンなど南米諸国が次々とパレスチナを独立国家として承認する決定をし、今年1月には保守政権のチリと親米的なペルーが続き、コロンビアを除く全南米諸国が国家承認をするに至った。南米では反米・反イスラエルのベネズエラ・チャベス政権が、2009年イスラエル軍のガザ地区への軍事作戦を機にイスラエルとの断交に踏み切り、パレスナ国家を承認するとともに、中東諸国の関係強化を図っている。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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