リビア情勢への中南米の反応(その2)制裁に踏み切ったブラジル

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2011年3月6日
エリア: 中南米 中東

 リビア問題をめぐる南米諸国の立場の違いが鮮明になりつつある。

 2月26日国連安保理によって対リビア制裁決議が全会一致で採択されたが、議長国として決議の採択を取りまとめた非常任理事国ブラジルの動きに注目が集まっている。

 2009年イランの核開発疑惑に対するアメリカ等の制裁の動きに反対し、トルコとともに制裁を回避するための仲介役を演じて、アメリカの反発を買うなどブラジルの独自外交を印象づけたが、今回はアメリカ等と一致して制裁に回ったからである。同決議には人道上の観点から中国やロシアも賛成したという特殊事情があったことは疑いないが、南・南協力や対米自立を意識したルーラ前政権の独自外交から、ジルマ・ルセフ政権になってより対米協調を意識した外交政策への転換とも受け取られている。

 ブラジルは昨年7.5%のGDP成長を達成し、イギリス、フランスを抜いて世界第5位の経済大国に躍り出たことが確実になった(3月3日付フィナンシャル・タイムズ紙電子版)。その大国としての責任を世界に示し、将来の常任理事国入りに向けた現実主義外交の一環とも理解できる。ルーラ時代には米国を意識し多極化の推進に傾注するあまり、キューバ、ベネズエラ、イランでの人権問題に目をつむり反米諸国との協調関係につとめ、それが批判されてきただけに、この変化は注目されよう。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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