リビア情勢への中南米の反応(その2)制裁に踏み切ったブラジル

 リビア問題をめぐる南米諸国の立場の違いが鮮明になりつつある。

 2月26日国連安保理によって対リビア制裁決議が全会一致で採択されたが、議長国として決議の採択を取りまとめた非常任理事国ブラジルの動きに注目が集まっている。

 2009年イランの核開発疑惑に対するアメリカ等の制裁の動きに反対し、トルコとともに制裁を回避するための仲介役を演じて、アメリカの反発を買うなどブラジルの独自外交を印象づけたが、今回はアメリカ等と一致して制裁に回ったからである。同決議には人道上の観点から中国やロシアも賛成したという特殊事情があったことは疑いないが、南・南協力や対米自立を意識したルーラ前政権の独自外交から、ジルマ・ルセフ政権になってより対米協調を意識した外交政策への転換とも受け取られている。

カテゴリ: 環境・エネルギー
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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