饗宴外交の舞台裏 (154)

危機感から生れた官民一体「フランス料理キャンペーン」

執筆者:西川恵 2011年3月13日
エリア: ヨーロッパ
ギー・マルタン氏によるデザート(筆者撮影、2点とも)
ギー・マルタン氏によるデザート(筆者撮影、2点とも)

 フランスが農産加工品の輸出促進キャンペーン「So French, So Good」(フランスだからこそ美味しい)を開始した。「美食の国」の名声にあぐらをかいていた反省から、フランスの食の素晴らしさをPRし、農産加工品の輸出振興を図ろうとの狙いだ。  3月1日の夜、フランス大使公邸で豪華な夕食会が開かれた。招かれたのはフランス農産品の輸入業者、フランスレストランの経営者やシェフ、それにジャーナリスト。私にも声がかかり、大勢の中に交じってお相伴にあずかった。  料理に腕を振るったのは公邸料理人ではなく、わざわざこの日のためにフランスから飛んできたパリの著名なレストラン「グラン・ヴフール」のオーナーシェフ、ギー・マルタン氏。日本でもよく知られた料理人である。  同氏はフランスの美食を象徴するフォアグラの親善大使でもある。この日から4日間の日程で開幕した幕張メッセで「第36回国際食品・飲料展」(FOODEX)にフランスのフォアグラ業者が出展したのに合わせ、フォアグラの特別レシピで日本人をもてなそうとの企画が練られた。フォール駐日大使が公邸を開放する官民一体の作戦でもあった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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