閣僚引き揚げ騒ぎ、あっさり収束――インド国民会議派の貫録勝ちか

執筆者:山田剛 2011年3月11日
カテゴリ: 国際 政治

  政治がしばしば経済を縛るインドでは、各政党が抱える個別事情や政党間の虚々実々たる駆け引きから目が離せない。
 4月13日投票の南部タミルナドゥ州議会選の候補者調整で揉め、与党連合の中核である国民会議派に対し一時は自党の6閣僚全員を引き揚げると息まいていた地方政党ドラビダ進歩同盟(DMK)は9日までに、振り上げた拳をあっさりと下し、候補者配分で会議派の言い分をほぼ飲んだ。豪腕政治家M・カルナニディ党首率いるDMKは2006年、州内の国営褐炭採掘会社ネイベリ・リグナイトの株式売却に反対して連立離脱をチラつかせ、中央政府に計画を白紙撤回させた「実績」があったが、今回は形勢不利と見て会議派に大きく歩み寄った形だ。
 ドラビダ系といわれるインド先住民族の利益を代表する政党であるDMKは、南部の中核都市チェンナイを抱える重要なタミルナドゥ州に一大勢力を持ち、2004年総選挙で国民会議派に与して大勝、政権交代の立役者となった。定数545議席の連邦下院で18議席を持ち、しばしばキャスティングボートを握ってきたこともあり、自党の要求を押し通すための大規模ストライキを主導したり、前回州議会選ではカラーテレビの無料配布を公約に掲げたりと、実にやりたい放題。カルナニディ氏の二男M・K・アラギリ氏は連邦政府の化学・肥料大臣、後継者と目される三男のM・K・スターリン氏は州政府の副首相、その妹カニモジ氏は連邦上院議員と、まさに強固なファミリー政治を展開しているが、地元民の評判は概して良好だ。チェンナイ周辺に続々進出する日本企業など外資にもかなり好意的と言われている。
 今回の紛争はといえば、前回の州議会選で候補者48人を立てた会議派が今回は60人を擁立することでいったんDMK側と合意した後に、再度63人への上積みを要求したことが発端。これにキレたカルナニディ氏が親族のD・マラン繊維相ら自党所属6閣僚の引き揚げを宣言して会議派にケンカを売ったのだった。
 だが、2004年の総選挙で145議席しか獲得できなかった会議派は現在207議席を抱え、政権安定度は以前と比較にならない。しかも会議派は、DMKが連立離脱すれば北部ウッタルプラデシュ州に拠点を持つ有力政党「社会主義党(SP)」を引き入れる考えを示唆するなど最後まで余裕の構えだった。
 結局、DMKは、自党から121人、会議派には要求通り63人の立候補を認めた。これにより、国民会議派は、4月中旬から5月にかけて同じく州議会選挙の投票を実施する東部の重要州・西ベンガル州でも、地元政党で連立の一角を担うトリナムール会議派(党首はタタ自動車の工場を州外に追い出したママタ・バナジー現鉄道相)との候補者調整にも強気の姿勢で臨みそうだ。
 現職閣僚らの相次ぐ汚職疑惑で厳しい政権運営を迫られていた会議派だが、ブラフも含めて突っ張り通したことで得たものは大きい。
 このようにインド政治ウォッチャーとしては、また今回もいい演目を見せてもらったと満足している。それにしても、筋金入りのインドの政治家からみれば、まったく気迫を欠いた日本の選良たちは実に甘っちょろく映るに違いない。(山田 剛) 
 

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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