原子力安全委員会はどこへいった?

執筆者:塩谷喜雄 2011年3月20日
エリア: 日本
冷却のための放水作業が続く福島第一原発(c)時事(陸上自衛隊中央特殊武器防護隊提供)
冷却のための放水作業が続く福島第一原発(c)時事(陸上自衛隊中央特殊武器防護隊提供)

 深刻な原発事故の拡大を防ぐべく、「総力戦」が日夜続いている。聞こえてくるのは「作戦は成功」という大本営発表ばかりで、冷静な評価や高度な専門知識に支えられた今後の見通しが示されることはない。その役割を果たすべき組織、原子力安全委員会(班目春樹委員長)は、この間ずっと「行方不明」なのだ。  安全委員会は日本の原子力安全を統べる元締めである。行政組織上は内閣府の審議会のひとつで、経済産業省の原子力安全・保安院や文部科学省など役所の行なう安全規制を再チェックし、事業者と行政を両方監視する。必要なら政府や自治体に勧告を行なう権限を持つ。  その元締めが、東電福島の深刻な事故が判明してから10日経っても、一度も記者会見をしていない。班目委員長が12日に菅直人首相と同道して現地訪問したこと、職員を現地対策センターに派遣したことなどは、ホームページに記されているが、国民に向けての情報発信はゼロである。  何ゆえの沈黙なのか。2000年に作られた原子力災害対策特別措置法=原災法では、安全委は対策本部長(首相)に技術的な助言を行なう、と決めている。法制度上は、安全委という客観的な専門家の評価と意見を、政府は受け止めなければならない。  班目委員長は官邸で連日開催されている対策本部の会議にはほとんど出席しているようだが、首相への助言はきちんとなされているのだろうか。法律上は事故後すぐに立ち上げるはずの緊急技術助言組織はいつ作られ、どう機能しているのだろうか。国民の目には何も見えていない。  情報を対策本部に一元化するという意味で、安全委からの独自の発信を止めているというのなら、その旨をメディアや国民に広く示すべきだろう。事業者の都合や政治の思惑に左右されない、専門家集団による中立的な評価や助言が、本当に首相に届いているのか、それは対策に速やかに反映されているのか、私たちは知るすべがない。

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執筆者プロフィール
塩谷喜雄 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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