堕ちゆく世界の迷走
堕ちゆく世界の迷走(7)

世界を変える日本の複合危機

執筆者:青柳尚志 2011年3月24日
エリア: 日本

 9.11ではなく3.11。東日本大震災と大津波、次々と襲いかかる原発危機、電力供給不足による企業活動と市民生活への打撃、生産と流通の機能マヒ──。日本を折り重なるように危機が襲っている。
 日本の危機は日本一国だけでは収まらない。日本はグローバルな供給網のなかに組み込まれているだけに、影響は全世界に及ぶ。3月11日に大震災が起きて以来、世界的な株安連鎖が引き起こされたのはこのためだ。複合危機を克服できるか。ギリギリの戦いが続いている。

世界が恐れた「円高・株安パニック」

経済への影響も大きい(節電でネオンを消した銀座の街)(c)PANA
経済への影響も大きい(節電でネオンを消した銀座の街)(c)PANA

 福島、茨城県産などの野菜から基準値を超える放射性物質が検出されたのに続き、東京都などの水道水からも乳幼児の基準値を上回る放射性物質が含まれていたと発表されたことで、ペットボトル・パニックが起こった。全体像のつかめるハザードマップ(災害地図)を示さずに、「安全だが念のために」と繰り返してきたことが、かえって人心を不安に陥れている。  日本産の食品ばかりでなく、工業製品についても放射線量を測定する国が現われるなど、「汚染された国」というイメージが国際社会に広がりつつある。日本は金融市場や貿易取引などの面でも、不安の源になろうとしている。米国などはつっかい棒を入れるのに必死だ。 「日本当局からの要請に基づき、米英加当局および欧州中央銀行(ECB)は、18日に日本とともに為替市場における協調介入に参加する」。日本時間18日朝に開かれた緊急の電話会議を受け、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁は共同声明を発表した。G7の協調介入はユーロ安が進んだ2000年以来10年半ぶりとなる。  米欧から協調介入を取り付けたのは野田佳彦財務相だが、協調介入は会議で異論なく決まった。米欧諸国が恐れたのは日本発の株安連鎖だ。  日本が保有する外貨建て純資産は2009年末現在で266兆円。純資産は資産から負債を差し引いた金額だが、外貨建て資産だけでみると555兆円となる。工場など直接投資68兆円、株式54兆円、債券207兆円などとなっている。  最も金額の多い海外資産である債券を投資先でみると、米国が31%、独、仏、英がそれぞれ6-8%。米欧の債券が合わせて全体の約7割を占めている。一方、株式については、全体の39%が米国株、8%が英国、12%がケイマンのオフショアとなっている。日本勢が資金繰りに困り、外債などを大量に売却すると、米欧の金融・株式市場を揺さぶりかねない。そんな懸念が、世界の金融関係者の間を走った。

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