いま私たちがやるべきこと(3)

平野克己
執筆者:平野克己 2011年3月24日
カテゴリ: 環境・エネルギー
エリア: 日本

 先回、毎日新聞社の斗ヶ沢氏のことを書いた。それと同時に、じつはもうひとりの友人に教えを請うていた。斗ヶ沢と一緒に東北大学理学部に進学し、大学院を経て素粒子原子核物理の研究者になって、現在は高エネルギー加速器研究機構(KEK)の教授をしている宮武宇也氏だ。宮武(斗ヶ沢同様昔の呼び名を許されたい)もまた、北海道小樽の高校でシコシコと同人誌を作っていた文学仲間だった。宮武は、小樽の在、浜益村からやってきた秀才だった。われわれ3人はとても親しかった。

 KEKは現在、福島災害対策本部に放射能測定機器と2名の研究者を派遣している。KEKにはつくばキャンパスと東海キャンパスがあるが、実験施設の多くが停止しているらしい。そんななかでも、放射能測定の守備範囲を広げようと努力しているという。

 宮武から返ってきた返答は難しく、(彼自身は低線量の専門家ではないのでと断りつつも)素人にはなかなか理解できないところがあったので、「こう理解してよいか」と何度かやりとりを繰り返した。先回をフォローする意味で、その結果を紹介しておきたいと思う。

 放射線が人体に与える健康被害に関しては、これ以下は安全と言い切れる閾値は存在しない。統計学的には無視してよいとされるレベルではあっても、微量の放射線がガン発症率を高めるのは確からしい。とはいえ、たとえば現在、福島原発から20km以上離れている地域での放射線量では、そこにおられる誰かが将来ガンを発症したとして、いま蒙っている放射線とそのガンとのあいだに因果関係があるとは言えない。九州に住んでいる人のガン発病と区別はできないということだ。普通人の言語世界なら「害はない」というところだが、もちろんこれは、政府の指示を守っての話である。

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執筆者プロフィール
平野克己
平野克己 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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