兵力の逐次投入を避けよ

2011年4月5日

 自衛隊の幹部が等しく受けてきた教育の一つに指揮幕僚教育というのがある。敵の行動が判然としない「Fog of War」と言われる状況において、指揮官の決断を補佐する幕僚の資質を養うための教育である。情報を収集し、その情報を分析評価し、敵の可能行動を列挙し、これに対する我方の行動方針を決めて指揮官の決断を仰ぎ、決断に基づき部隊に果敢な行動を命ずるまでの一連の課程を教育するものである。

 そのような教育内容を地震災害による福島原発事故への対応に照らしてみると、いくつかの齟齬があるように思われる。関係する情報は適時的確に一ヶ所に集約され、分析・評価して関係者全員に提供されていたのであろうか。戦いでは、敵の意図と能力を考えて可能行動を列挙するが、このたびの事故において「意図」なる要素はない。純粋に物理的・科学的な考察に基づいて起こりうる潜在事態を考察すればいいが、潜在事態は網羅され列挙されていたのであろうか。そして、それらの事態すべてに対して、対処行動方針は案出されていたのであろうか。現在起こりつつある事態は、列挙された潜在事態の中に入っていたのであろうか。最悪の潜在事態を想定した対処方針が選択されたのであろうか。

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