日本政府は、福島の原発事故への対応に際して、2つの「痛い」失敗を犯した。
1つは、想定外の出来事が連続する中で、放射能危機の蓋然性とその拡がりを考慮せず、目の前にある事象への対処に忙殺されたことである。政府は、事態を見通すにあたって、楽観的な解決から悲観的な混乱まで、その蓋然性に幅を持たせて示すことはなかった。人々は、その時々における安全と不安全とのどちらかを知らされたにすぎない。そのため、国民は、事態がいつどのように変化するか、それに伴って退避行動などの特別な対応が必要になるかについて、予見し備えることができなくなっていた。人は、最悪のシナリオを知らされると、パニックに陥ることがあると、政府は懸念したに違いない。そうであっても、日本国民の賢明な分別を信じ、蓋然性の幅を示すことが、個人個人が持つ自己決定権に基づく判断の手助けとなると考える。
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