後退を余儀なくされるオバマの高速鉄道網整備計画

足立正彦
執筆者:足立正彦 2011年4月18日
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 オバマ大統領は石油への過度な依存からの脱却、温室効果ガス排出量の削減、益々悪化する交通渋滞の解消等を目的として、米国民の80%がアクセスできるように、2035年までに全米に高速鉄道網13路線を整備する構想を、政権のインフラ整備プロジェクトの柱として提案している。6年間で総額530億ドルを拠出する大プロジェクトだ。だが、現時点で米議会が承認した関連予算総額は約100億ドルにすぎない。米国の財政状況が悪化する中、歳出削減を求める共和党からの圧力が一層強まっており、オバマ政権が掲げるこのプロジェクトは、実現に向け益々厳しい状況に陥りつつある。

 高速鉄道網整備の対象になっていたウィスコンシン、オハイオ、フロリダでは、昨年11月の中間選挙で共和党州知事候補が勝利した。その結果、3州では州知事は前任者が推進してきた高速鉄道網整備プロジェクトの建設着手に必要な連邦補助金の受け取りを拒否し、同整備プロジェクトの凍結を相次いで発表している。ウィスコンシン州の場合、前任の民主党州知事であるジム・ドイルは地元の経済の活性化、雇用の創出にもつながるとしてミルウォーキー・マディソン間150キロの8億1000万ドル規模の高速鉄道の整備プロジェクトを熱心に推進していた。だが、新たに就任した共和党州知事のスコット・ウォーカーは選挙キャンペーン中から高速鉄道整備プロジェクトは正に予算の無駄遣いであり、高速鉄道の整備が完成した場合、州政府が負担することになる年間750万ドルもの運用コストは州財政を切迫するとして反対姿勢を鮮明にしていた。ウォーカーは、州内に新たに高速鉄道を建設するよりも、州内の高速道路、橋梁の補修に取り組むべきであるとして、高速鉄道整備関連予算を転用できるよう米議会は認めるべきと訴えていた。

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執筆者プロフィール
足立正彦
足立正彦 住友商事グローバルリサーチ シニアアナリスト。1965年生れ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より現職。米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当する。
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