電力不足対応とサマータイム

原英史
執筆者:原英史 2011年4月28日
エリア: 日本

 

夏に向けて、首都圏では節電対策の具体化が急がれる。
節電というと、すぐ「ネオン禁止」とか「深夜営業自粛」といった議論が出てくることがあるが、これは、オイルショック時の“記憶”に引きずられているだけ。今回の電力不足に際してはあまり意味がない。電力不足が危惧されるのは、日中の電力需要のピーク時間帯(午後1~5時)であって、夜間の電力は足りている。
オイルショック時は、原油不足が問題で、電気使用の総量を減らす必要があった。また、昭和40年代初頭までは、まだエアコン普及率も低く、年間通じての電力需要ピークは冬の夕方。これがようやく逆転したばかりの時期だったわけで、当時と今とは事情が異なる。
 
ピーク対策という観点では、いくつかの企業が、独自のサマータイム導入(始業時間を1~2時間程度早める)を表明している。これは、昼休み時間や終業時刻の前倒し・分散により、有効な対策になろう。
 
さらに、本来の意味での「サマータイム」、つまり、欧米などで広く導入される、夏季期間中に時計の針そのものを早める制度を導入してはどうかとの主張もある。夏の早朝の明るく涼しい時間帯(東京の場合、6~8月の日の出時刻は概ね5時前)に活動時間をずらそうというもの。
例えば、石原東京都知事らは26日、官邸にサマータイム導入を要望したそうだ。
 
これに対して、消極論は、
(1)時計そのものを早めるとなると相当なコストがかかる、
(2)一斉に1時間ずらしてもピーク対策にはならない、
(以上2点は、26日午前の枝野官房長官会見より)、
(3)さらに古くからある議論として、始業時間を早めても終業は早くならず、労働強化になるのでは、といったものだ。
 
ここで一つ指摘しておきたいのは、そもそも、近隣諸国の時間と見比べると、東日本の標準時が遅すぎることだ。
・ウラジオストクは、東京より西なのに時間は1~2時間早い、
・札幌からソウルに経度14度(約1時間分)西に移動しても時刻は変わらない、
・北京に経度25度(2時間分近く)移動しても1時間しか違わない、
といった具合。
 
(参考)
・北京(東経116度): 日本時間-1時間
・ソウル(東経127度): 日本時間±0
・那覇(東経127度): 日本時間
・ウラジオストク(東経132度): 日本時間+1時間(夏時間は2時間)
・東京(東経139度): 日本時間
・札幌(東経141度): 日本時間
 
こうしてみると、「東日本限定のサマータイム」あるいは「東日本と西日本の時差(年間通じて)」を導入し、(企業単位でなく)東日本の社会全体で、早朝の涼しい時間帯を有効活用しやすくすることは、検討の価値があるのでないかと思う。
社会全体で早朝に活動をシフトできれば、ピーク対策として一定の効果はあるはずだ。
さらに、当面の電力不足対応にとどまらず、この際、「日本の標準時は東経135度」という決まり(明治19年勅令「本初子午線経度計算方及標準時ノ件」以来)を考え直す良い機会でもある。
 
なお、かつて20年ほど前、「サマータイム導入」が一時議論された頃にも、「東日本限定」という提案はあった。当時は、「国内に時差を設けるなどあり得ない。各地に支店のある会社で大混乱してしまう」と一蹴されたものだが、今や、多くの企業はアジアワイドで活動し、社内時差への抵抗感も解消しているはず。
国内時差もそろそろ検討してみてよいのでないかと思う。
 
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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