「公務員給与1割削減」というが、閣僚の給与はどうなっているのか

原英史
執筆者:原英史 2011年5月1日
エリア: 日本

 「震災の復興財源確保のため、国家公務員の給与を人事院勧告抜きで1割削減」との報道がある。

 
「人事院勧告抜きで給与削減」という話は、震災対応で突然浮上したものではない。
経過を振り返っておくと、
・もともと、民主党が一昨年来(衆院選、参院選)のマニフェストで「人件費2割削減」を公約。
・昨年夏、国家公務員給与に関する人事院勧告が「給与1.5%カット(平均)」にとどまったため、「それでは2割削減と程遠いので、人事院勧告を超えた削減が必要では」という問題が焦点に。
・昨年9月の民主党代表選で、菅総理は「人事院勧告を超える人件費削減」を掲げたが、結局、調整の結果、昨年秋の臨時国会で、政府は「人事院勧告どおり1.5%カット」の給与法改正案を提出し成立。
・その際、政府は「この臨時国会では調整時間が足りず間に合わなかったが、通常国会で、人事院勧告より深堀削減する法案を提出する。さらに、労使交渉により給与を決定できるようにするための法案も提出する」と表明していた。
 
今回の件は、この昨年秋の積み残し課題への対応である。
さらに震災財源確保という要請も加わった中、早急な検討・実施が求められることは言うまでもない。
 
政府内でも既に検討されているようだが、こうした給与カットを行うときの基本は、「幹部の削減幅は大きくし、若手の削減幅は小さくする」ことだ。
まともな民間企業なら、こういうとき、まず経営陣の役員報酬を思い切って削減し(例えば50%以上カット)、その上で一般従業員の給与カット(例えば10~20%カット)に踏み切るものだろう。
 
ここで、気になるのは、政府の経営陣にあたる閣僚の対応だ。
今のところ、菅内閣では、
・自公政権時代から続けられている「10%返納」をそのまま続け、
・先日成立した国会議員歳費削減(6か月間、月50万円返納)を、他の国会議員と同様に行っているだけ。
政府の経営陣として「役員報酬を思い切って削減」する姿勢は見られない。
4月29日の衆議院予算委員会での渡辺喜美議員質問によれば、菅総理の給与カット率は年収ベースで13.9%。かつて安倍総理が「厳しい財政事情」を理由に30%カットしていたことにも遠く及ばないという。
 
こうして自ら身を削る姿勢を示さないまま、いきなり一般職員の給与カットを持ち出すことは、順序として違和感がある。少なくとも、一般職員に納得感を与えモチベーションを保つ上で、適切な手法とは思われない。
 
また、海江田経済産業大臣は、東電が「役員報酬50%カット」の方針を示したのに対し、「まだまだカットの仕方が足りない」と発言したとも聞く。そういう発言をするなら、まず菅内閣が範を示すべきではないのか。
 
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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