「変わり始めたドイツ」への懸念

執筆者:花田吉隆 2011年5月4日
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ
5月2日、ドイツ北東部のバルト海沿岸沖で洋上ウィンドファーム(風力発電基地)を視察したメルケル首相 (C)AFP=時事
5月2日、ドイツ北東部のバルト海沿岸沖で洋上ウィンドファーム(風力発電基地)を視察したメルケル首相 (C)AFP=時事

 ドイツを心配する声が聞かれる。  その1。3月17日、国連安保理がリビア上空の飛行禁止区域を設定した。その決議に当たりドイツはロシア、中国などと共に棄権し関係者をあっと言わせた。ドイツはこれまでコソボでもアフガニスタンでも積極的にNATO軍に参加し、他の欧州諸国との協調を乱すことはなかった。中東の安定はヨーロッパにとり殊のほか重要だ。当然ヨーロッパ諸国はドイツが一緒に行動するものと思っていた。ところがドイツは1人参加を見送った。  その2。ユーロ危機は今もくすぶる。いつまた火を噴くか分からないから、ヨーロッパとしては万全の救済策を用意し、PIIGS諸国の信用不安を抑えなければならない。ところがドイツが乗ってこない。ドイツ国民は、国民の税金で浪費三昧に明け暮れた国を救うのはまかりならぬ、と言う。これに対しメルケル首相は、「ユーロが倒れればヨーロッパが倒れる、ユーロ問題は単なる通貨問題ではない、ヨーロッパ全体に拘わる死活的問題だ」と言ってドイツ国民を説得しようとするがなかなかうまくいかない。逆にメルケル首相がドイツ世論に押さえ込まれる始末だ。  その3。日本の原発事故は欧州でも大きな波紋を呼んだ。各地で原発を見直す動きが広がったが、中でもドイツの反応が際立つ。元々ドイツは冷戦時代、米ソ核戦争が起きれば真っ先に戦場になるところだった。そのため国民は核に対し極めてセンシティブに反応する。既に2002年、時の社民党・緑の党連立政権が原発を2022年までに全廃する旨決めていた。メルケル首相は昨年、これを平均12年延期することとしたが、日本の原発事故を受け急遽延期を凍結、3カ月かけて見直すこととし反原発に大きく舵を切った。これ自体は今後ドイツが原発にどう取り組んでいくかの問題であり、他のヨーロッパ諸国がどうこう言うべき話ではない。しかしヨーロッパの反応は違う。ドイツ1人が原発問題で先走っていると見る。

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執筆者プロフィール
花田吉隆 元防衛大学校教授。1977年東京大学法学部卒業。同年外務省入省。在スイス大使館公使、在フランクフルト総領事、在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授などを歴任。
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