印中の民間ビジネス、ようやく本格化へ~自動車、通信などで続々投資案件

執筆者:山田剛 2011年5月7日
カテゴリ: 国際 経済・ビジネス

 

倍々ゲームの勢いで二国間貿易額が急増しているインド・中国だが、最近になって両国間の直接投資、特に中国企業の対印投資が徐々に本格化し始めた。長年の国境紛争を棚上げして経済協力による実利外交を推進する印中の民間ビジネス協力は、いよいよ新たなステージに入ったといえるだろう。
1990年代を通じてほぼ年間50億ドル前後で推移してきた印中の二国間貿易額は04年以降、幾何級数的に増加。2010年度の実績は目標より2年も早く600億ドルを超えたと見られている。その間、度重なるインド側のアンチダンピング課税適用やセーフガード発動、果ては中国製通信機器の禁輸措置など摩擦もあったが、中国は今やインドにとって堂々たる最大の貿易相手国となっている。
しかし、二国間の直接投資はまだまだ細々としたもので、インド企業では多目的車大手マヒンドラ&マヒンドラによる中国のトラクター・メーカー買収や建設・エンジニアリング大手ラーセン・アンド・トウブロによる無錫への開閉器工場建設、自動車用鍛造品大手バーラト・フォージと第一汽車グループによる合弁企業(JV)設立などの実例があるが、中国企業の対印投資は2000-2009年の累計で5000万ドルをわずかに超えただけだ。
だが、昨年10月には自動車部品製造で初の印中合弁企業「ヤップ・ズーム」が南部チェンナイで生産を開始。12月には中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)が向こう5年間で総額20億ドルという巨額の対印投資計画を発表した。そして今年4月末、中国の商用車大手・北汽福田汽車(フォトン)がインド西部マハラシュトラ州への組み立て工場建設で州政府と覚書を交わした。工場用地としてはムンバイ郊外やタタ自動車工場などが集積するプネーが有力視されており、2012年末にも竣工し、バスやトラック、多目的車など、乗用車同様に巨大需要が見込める商用車について年産10万台の生産を目指す。
中国自動車メーカーではすでに、GM(ゼネラル・モーターズ)インディアに50%出資している上海汽車がGMや柳州五菱汽車との三社合弁によって、インドでミニバンなどを生産する計画を進めている。
単なる貿易だけでなく、企業が直接投資に踏み出したということは、大事なカネを相手国にゆだねることを意味し、最低限お互いを信用していなければ実行に移せないことだ。印中間では、携帯電話ブームに沸く電気通信や年産約300万台に到達した自動車産業だけでなく多くの分野で相互補完や協業を通じた利益拡大が見込めるだけに、今後も印中間では続々と投資案件が具体化しそうだ。(山田 剛)
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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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