「東電倒産」は止められない

執筆者:杜耕次 2011年5月24日
エリア: 日本
東電の次期社長に就任する西澤俊夫常務。左は退任する清水正孝社長 (C)時事
東電の次期社長に就任する西澤俊夫常務。左は退任する清水正孝社長 (C)時事

 政府やメガバンクが必死になって食い止めようとあがいている東京電力の「倒産」。福島第1原子力発電所の事故に対する電力業界ぐるみの損害賠償策を作っても、未曾有の事故直後に“敵前逃亡”した社長のクビをすげ替えても、失われた信用は回復せず、資本の論理によって、この会社が市場から退場を迫られるのは避けられない。賠償策決定後も、社長更迭を明らかにした決算発表後も、東電の株価下落は歯止めがかからず、社債スプレッドなど信用リスクも高まっている。存続理由が「賠償の履行」に凝縮される異常な状況下に置かれた時点で、その会社の命脈はすでに絶たれているのである。

JALの末期症状に似る

 福島原発事故の損害賠償の枠組み(賠償スキーム)が閣僚懇談会で正式決定されたのは5月13日。その前日(12日)まで一時500円台だった東電の株価は以後値を大きく下げ、同社の純損益が1兆2473億円の巨額赤字に転落した2011年3月期決算が発表された20日の終値は367円となった。多くの市場関係者が「震災後の最安値(292円=4月6日)を今後下回るのは間違いない」(中堅証券アナリスト)と見ている。
 社債の金利やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)といった信用リスクを示す指標も一向に改善していない。まず、東電債の流通利回りが悪化している。償還までの残存期間が9年余りの東電債の国債に対する上乗せ金利幅は、賠償スキームが決まる前後まで1%台後半から2%台前半で推移していたが、東電に対する金融機関の債権放棄を求める枝野幸男官房長官の発言【「(金融機関の債権放棄がなければ公的資金投入に)国民の理解は得られない」=5月13日記者会見】が波紋を広げるにつれて徐々に上昇。20日時点では4%台にまで上がっている。
 また、企業の信用リスクを取引するCDSの保証料率も枝野発言に触発される形で急上昇。「東電国有化」が初めて政府内で取り沙汰された頃につけた3月28日のピーク(4.46%)を5月17日に上回り、20日には一気に6.34%にまで高まった。
 状況は日本航空(JAL)の末期症状に似てきている。09年9月に自民党から民主党へ政権が交代。国土交通相(当時)の前原誠司は就任直後に「JALの自主再建は十二分に可能」と断言し、独自にタスクフォースチーム(通称“前原チーム”)を立ち上げたが、金融機関の債権放棄や年金債務の削減などを巡って作業が難航。前原チームは1カ月余りで雲散霧消し、その後、関係者間で綱引きが続いているうちに、JALは株価下落やCDS保証料率上昇に見舞われて資金繰りに行き詰まり、2010年1月に会社更生法の適用を申請、倒産に追い込まれた。

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