原発・東電 2つの調査委員会の独立性?

原英史
執筆者:原英史 2011年5月25日
エリア: 日本

 

震災直後のメルトダウンが明らかになった。当時、海水注入がストップされた経過についても議論が噴出。菅総理の指示はあったのか、班目原子力安全委員長は危険性を示唆したのかなど、政府の説明は迷走し、国会でも焦点となっている。
 
その最中、政府は24日、2つの調査委員会の設置を閣議決定した。
 
目的は、今回の事故の原因究明と再発防止策の検討。メンバーはまだ発表されていないが、報道では畑村洋太郎・東京大名誉教授の名前が取り沙汰されている。
 
冒頭あげた事故後の経過などは、今後、この委員会で検証されるものと見込まれるが、気になるのは、委員会の位置づけだ。
閣議決定を見ると、
・委員長や委員は「内閣総理大臣が指名」、
・事務局は「関係行政機関の協力を得て、内閣官房」が務める、という。
だが、総理大臣や関係省庁の職員らは、まさに、この委員会の調査対象そのもの。
総理大臣の指名を受け、関係省庁等から事務局サポートを受ける委員たちが、果たして、その人たちに厳しく切り込み、真相を究明できるのか。疑問を感じざるを得ない。
 
野党一部からも問題提起があるが、「国会に事故調査委員会を置く」など、調査対象からの「独立性」を高める仕組みが必要でないかと思う。
 
もう一つの委員会が、「東京電力に関する経営・財務調査委員会」。
こちらは、東電の賠償支援の一環で、厳正な資産評価、徹底した経費見直しを行うことが目的。下河辺和彦・弁護士ら、委員会メンバーもすでに公表された。
 
この委員会も、やはり「独立性」の問題を孕む。
というのは、
・主催者は「原子力経済被害担当大臣」(経産大臣が兼務)、
・事務局は「経済産業省その他関係行政機関の協力を得て、内閣官房」。
つまり、実質的に経済産業省の影響下で開催されることになっているからだ。
 
経済産業省は、言うまでもなく、従来から東京電力を所管・監督してきた立場。
このため、例えば、「従来の経営合理化が全く不十分だった」といった事実を新たに明らかにすることに対し、後ろ向きのドライブが働く可能性は否定できない。
 
菅総理は18日の会見で、原子力安全行政体制に関して、「チェックする立場の保安院」が、原子力推進も担う経産省に属していたことに問題があった、との認識を示した。
その反省があるならば、上記2つの委員会についても、「チェックする人の独立性」をきちんと確保すべきではないか。
同じ失敗を繰り返そうとしているように思われてならない。
 
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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