金正日総書記の訪中旅程

平井久志
執筆者:平井久志 2011年6月2日
カテゴリ: 国際 政治
エリア: 朝鮮半島

 北朝鮮の金正日総書記が5月20日から27日まで7泊8日の中国非公式訪問を行った。ここでは、この非公式訪問の旅程を確認してみたい。この日程が示唆するところや訪中の意味については別途、レポートします。

▽5月20日
同日未明、金正日(キム・ジョンイル)総書記を乗せた特別列車が北朝鮮の咸鏡北道南陽から中国の図們へ向けて進み、黒竜江省牡丹江市へ。故金日成(キム・イルソン)主席が1934年11月に日本軍と戦ったとされる鏡泊湖戦闘のゆかりの地である鏡泊湖を訪問。50年代に中国共産党の「北大荒」開墾のアピールに応えて開拓された同地域の農場や乳牛牧場を参観。農場で働く夫婦の住宅を訪問。載秉国国務委員主催宴。
▽5月21日
牡丹江を出た特別列車はハルビンを経て21日午前に長春到着。長春は64年9月に金日成主席と周恩来首相が会談し、昨年8月に金総書記と胡錦濤国家主席が会談した場所。長春では核心区域建設計画博覧館を参観。同博覧館は長春―吉林―図們地域を一体化した経済区をつくり北朝鮮との経済協力拡大のために建設された施設。続けて中国第1自動車集団公司を参観。金日成主席が75年の訪中時に利用した「紅旗」常用車参観。解放汽車公司参観。中国共産党吉林省委が宴会。
▽5月22日
特別列車は21日午後に長春を出発し、瀋陽を経て河北省、山東省を経て南下約2000キロを走り22日夜、江蘇省の揚州市へ。ここも金日成主席が91年10月に最後に訪中した際に江沢民主席に案内されて訪問した地。
▽5月23日
揚州市で揚州経済技術開発区「智谷」展覧センター、太陽エネルギー科学技術公司を参観。揚州迎賓館近くの大型ショッピングモール「華潤蘇果スーパー」を参観。載秉国国務委員主催宴。
▽5月24日
特別列車は揚州を出発し南京へ。ここも金日成主席が75年4月に鄧小平氏と、91年10月には江沢民主席とともに訪問した地。南京では液晶関連企業の南京パンダ科学技術公司を参観。この企業の前身は金総書記が83年6月に中国を訪問した際に参観した南京弱電機械工場。中国共産党江蘇省党委が宴会。
▽5月25日
特別列車は24日午後、南京を出発し25日朝、北京到着。釣魚台迎賓館へ。同迎賓館で温家宝首相と会談。人民大会堂で胡錦濤国家主席と会談。訪中期間中に賈慶林、李長春、習近平、李克強、賀国強、周永康の各中国共産党政治局常務委員と個別に会談したり、参観に同行するなどした。胡錦濤主席が歓迎宴。
▽5月26日 
李国強常務委員(副首相)の案内で北京郊外の情報技術サービス企業の神州デジタル公司を参観。李克強常務委員主催の昼食会。賈慶林常務委員、劉淇北京市党書記の見送りを受けて帰国の途に。
金総書記の全旅程に載秉国国務委員、王家瑞党対外連絡部長、盛光祖鉄道相が同行した。
▽5月27日 
北朝鮮へ帰国。3男の金正恩(キム・ジョンウン)党中央軍事委副委員長、実妹の金慶喜(キム・ギョンヒ)党軽工業部長、側近の李明秀(リ・ミョンス)人民保安部長、軍の金元弘(キム・ウォンホン)、玄哲海(ヒョン・チョルヘ)両大将らが国境で出迎え。

上記の金総書記の旅程を見てみると、金総書記の訪問地は金日成主席のゆかりの地と、中国の改革・開放政策の成果としての経済関係施設である。
温家宝首相は日中韓3カ国首脳会談のために訪日した際の5月22日の韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領との会談で、金正日総書記の訪中目的について「中国の発展状況を理解し、(北朝鮮の経済)発展に活用する機会を与えるためだ」と説明したが、上記の訪問施設はこうした中国側の意図を裏付けている。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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