中南米で高まる中国のプレゼンス――習近平副主席の歴訪

執筆者:遅野井茂雄 2011年6月13日
エリア: 中南米 アジア

 中国の次期国家主席就任が有力視されている習近平副主席が、イタリア訪問に続き、6月4日から13日まで、キューバ、ウルグアイ、チリの3カ国を歴訪し、国家主席並みの歓迎を受け、2010年代の新たな協力関係の礎を築くとともに、近年急増する中南米での中国の存在の大きさを改めてアピールした。同副主席としては2009年2月、メキシコ、ジャマイカ、コロンビア、ベネズエラ、ブラジルを訪問して以来2度目の中南米歴訪である。

 2004年のチリ・サンチアゴでのAPEC首脳会議出席を機に、胡錦濤主席は、ブラジル、アルゼンチン、キューバを歴訪、中南米における中国の外交攻勢を印象づけた。4年後の2008年11月5日、中国政府はペルーでのAPEC首脳会議に先立ち、中南米外交に関する政策文書(白書)「中国のラテンアメリカ・カリブ政策(“China’s Policy Paper to Latin America and the Caribbean”)」を公にし、多極化する世界と経済グローバル化の進展する中で、中南米諸国とのウィンウィン関係を構築するために、政治・経済・文化・軍事面での包括的協力関係の強化・推進を謳いあげた。その下で翌2009年には米州開発銀行(IDB)の域外加盟国として加盟を果たし、中南米の地域開発への拠出国(3. 5億ドル)として欧米諸国、日本、韓国と肩を並べた。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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