日本のためのアフリカ政策-COP17

執筆者:平野克己 2011年6月14日
エリア: アフリカ アジア

 開発途上国の専門家で構成される私たちの研究所にも、通常並みの仕事の依頼や情報のひきあいが戻ってきた。中東北アフリカ情勢やインドネシア関連が多い。アフリカについても官庁、企業、マスコミから連絡が入るようになった。

 いま私が現場にもっとも近いところで関わっているのは、今年の年末に南アフリカのダーバンで開催されるCOP17(国連気候変動枠組み条約第17回締結国会議)。ポスト京都議定書のあり方を決める会議である。
 京都議定書は1997年のCOP3で合意された。議長国であった日本は、温室効果ガスを1990年時から6%削減する義務を負ってこれをまとめた。しかし環境対策先進国である日本で排出量を削減するためのコストは、そうでない国と比べるとどうしても大きくなる。国内での達成はほぼ不可能とされていて、そうなると「京都メカニズム」を使って開発途上国の環境対策を支援するか、あるいはほかの国から排出権を買うことになる。その費用は数兆円といわれる。
 震災復興中の日本でそんなことが可能だろうか。開発途上国への環境対策支援でえられる排出権をCDMというが、国際認定が難しくて想定されていたようには進んでいない。CDMはCO2の排出実績をベースにするので、現在の排出量が多いほうが得をする。京都議定書の最大の問題は、CO2排出量が世界最大の中国は削減義務を負っておらず、第2位のアメリカが参加しなかったことだ。つまり、京都メカニズムでは中国がもっとも得をするのである。

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執筆者プロフィール
平野克己(ひらのかつみ) 1956年生れ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院経済研究科修了。スーダンで地域研究を開始し、外務省専門調査員(在ジンバブエ大使館)、笹川平和財団プログラムオフィサーを経てアジア経済研究所に入所。在ヨハネスブルク海外調査員(ウィットウォータースランド大学客員研究員)、JETRO(日本貿易振興機構)ヨハネスブルクセンター所長、地域研究センター長などを経て、2015年から理事。『経済大陸アフリカ:資源、食糧問題から開発政策まで』 (中公新書)のほか、『アフリカ問題――開発と援助の世界史』(日本評論社)、『南アフリカの衝撃』(日本経済新聞出版社)など著書多数。2011年、同志社大学より博士号(グローバル社会研究)。
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