インド、スポーツ大国への小さな一歩

執筆者:山田剛 2011年6月18日

 

 クルマから人工衛星まであらゆるものを国産化し、核ミサイルまでも自力で飛ばせるインドだが、なぜか「国技」クリケットやホッケー以外のスポーツとなると三流、四流の地位に甘んじている。インドがこれまでにオリンピックで獲得したメダルはわずか18個(インドから参加した英国人を除く)。男子フィールドホッケーの五輪6連覇を含む11個というのが燦然と光っているが、その他はレスリング、重量挙げ、射撃などがあるだけ。活躍種目も非常に偏っている。
その背景事情は以前のこの欄でも取り上げたが、ヒンドゥー教的価値観から身体接触を嫌うこと、生活に余裕がなくてスポーツどころではない、ということが主な理由だったのではないかと考えられる。
だが、昨年インドで開催した英連邦競技大会(コモンウェルス・ゲームズ2010)が「大成功」を収め、多くの種目で自国選手が活躍したことで、印政府や一部国民のスポーツ熱がにわかに高まってきたのも事実だ。
経済成長による所得増や健康志向、ファッション性などから、上位中間層や富裕層が公園でテニスやバドミントンをやり始めたり、グラウンドでサッカーボールを追いかける学生の姿も徐々に見かけるようになってきた。
こうしたトレンドを捉え、インドスポーツ振興局(SAI)では、中国のスポーツエリート養成機関・北京体育大学にコーチら80人を送り、トップアスリートを育てるノウハウを学ばせる派遣事業を計画している。医療技術・医薬品開発とも密接な連携が期待できるスポーツ科学の分野でも、印中協力には大きな期待が寄せられているという。
クリケットの陰に隠れた感があるが、インドにおける潜在的なサッカー人気を見越して、すでにナイキなど世界の有力メーカーやショップがインドでサッカー用品・グッズの本格的な拡販に乗り出している。スイスのサッカー関連イベント会社インターナショナル・フットボール・アリーナ(IFA)のシュミット会長は今月上旬、「インドは米国や中国に匹敵するサッカー新興国になる可能性がある」と述べ、その将来性に大いなる期待を表明した。
もちろん、インドにとってスポーツ大国への道ははるかに遠いが、文化として、そしてビジネスとして、決して小さくない可能性を秘めているのは間違いないだろう。(山田 剛)
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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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