堕ちゆく世界の迷走
堕ちゆく世界の迷走(10)

「政治不在」が招く米欧中の経済失速

執筆者:青柳尚志 2011年6月22日
エリア: 中国・台湾

 辞任を巡ってこれほど粘り腰を見せた首相も近年珍しい。外国人献金問題の追及が始まった矢先の東日本大震災を奇貨とした延命。不信任決議をかわすための、死んだふり留任。震災復興を盾に取った国会の会期延長。果ては脱原発をシングルイシューとした衆院解散説まで飛び出す。
 原発事故収束に向けた対応と復興のための政策づくりは、いきおい後回しとなる。菅政権の下で日本政治の時計の針は止まっている。それでも経済は動くとばかりに、政府・日銀は景気の見通しを心持ち上方に修正させた。だが皮肉なことに、日本を引っ張ってきたはずの世界経済に、様々な変調のシグナルが点滅している。崖っぷちの細道を手放しで運転するような状況が続いている。

ギリシャ国債の元本一部カットはありえるか

パパンドレウ内閣が信任され、追加支援への道は開けたが……(c)AFP=時事
パパンドレウ内閣が信任され、追加支援への道は開けたが……(c)AFP=時事

 クレタ島の迷宮(ラビリンス)というべきだろうか。ギリシャの債務問題を巡る欧州の小田原評定が繰り返されている。1年前の5月、市場の力に追い詰められた欧州諸国は、ギリシャに1100億ユーロ(約12兆6400億円)の金融支援を実施し急場を凌いだはずだった。ところが、情勢は一向に好転せず、追加支援が避けられない情勢になっている。  ギリシャの国債を保有する投資家が固唾をのんで見守るのは、ギリシャ政府が元本の一部カットに追い込まれるかどうかだ。ギリシャは借りた金を返せない事態、つまりデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に立たされているのである。そのぶん借金が減るから、立ち直りのきっかけがつかめてよいではないか、というのは部外者の無責任な感想というものだ。  ギリシャの次に債務カットに追い込まれるのはどこか。金融市場でドミノ倒しが起きるのは目に見えている。ギリシャと同様に、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から金融支援を受けている、ポルトガルやアイルランドが次の標的になるのは必至だ。そうなると、スペインやイタリアも崖っぷちに立たされる。国内で金融問題を抱えるベルギーにもきしみは広がっている。  欧州の弱い鎖がもうもたないことを、問題国の国債利回りは端的に示している。ギリシャ国債の利回りは30%近くに達した。ポルトガル国債の利回りも10%に乗せた。投機筋の売りなどと、ヘッジファンドらのせいにするのはよそう。周辺国の国債を売り、資金を引き揚げているのは、主にドイツとフランスの金融機関であり、投資家である。

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