【インド】投資ホットスポットに化けた貧困州オリッサの「なぜ」

執筆者:山田剛 2011年6月26日
カテゴリ: 国際 文化・歴史

  インド東海岸。コルカタ(旧名カルカッタ)を擁する西ベンガル州と、アンドラプラデシュ州の間に位置するオリッサ州は、1人当たり州内総生産(08年度)が約1万8200ルピー(1ルピー=約1.8円)と、ムンバイを抱える西部マハラシュトラ州のほぼ半分。32の州・連邦直轄地の中では下から数えたほうが早いポジションにいる「貧困州」だ。

 このオリッサ州で最近、相次いで国内有力企業による投資計画が具体化しはじめた。5月以降だけでも、ジンダル・スチール&パワー(石炭液化プロジェクトなど1兆2000億ルピー)、インド火力発電公社(発電所、約5500億ルピー)、家電大手ビデオコン(火力発電所やITパークなど、1500億ルピー)、建設・エンジニアリング大手ラーセン&トウブロ(発電所、アルミ精錬工場、製鉄所などに8400億ルピー)などと大型案件が目白押しとなっている。
インド商工会議所協会(ASSOCHAM)によると、オリッサ州では2010年に72件、計1兆8000億ルピー(計画ベース)の投資誘致に成功。累計では鉄鋼やアルミ精錬、発電プロジェクトなどを中心に同574件、11兆3000億ルピーに達している。これだけ多くの投資を引き付けている背景には、同州が石炭や鉄鉱石をはじめボーキサイトやレアアース、さらには海産物などの資源に恵まれていること、ベンガル湾に面した地理的条件や港湾など比較的筋の良いインフラ整備計画があること、父子二代で州政府を率いるナヴィーン・パトナイク首相による州政権が安定していて目立った失政がないこと、などが挙げられる。
このことは、資源や地の利に恵まれ、まともなガバナンスを実践すれば、貧しい州であっても十分成長できる可能性があることを示している。
これだけなら、「オリッサで巨額投資案件続々」などと立派なストーリーになるのだが、だとすればなぜ、同州で過去最大級の対印海外直接投資となる大規模一貫製鉄所プロジェクト(年産1200万トン、投資額5100億ルピー)を進める韓国・ポスコが、これほどまでに苦労しているのだろうか。
周知のとおり、2005年に州政府と進出覚書(MOU)に調印したポスコは、土地取得を巡る農民・漁民、そして左翼活動家らの激しい反対運動に直面。計画は4年以上も遅れ、先ごろようやく環境規制をクリアし、土地取得を再開したばかり。しかも州政府は「ポスコさん、土地はそちらで責任もって手当してください」とばかりに、事実上土地収用から手を引いてしまった。
オリッサを目指すインド企業は、このポスコの事例を目の当たりにしてなおかつ同州に進出しようとしているのだ。
国内企業と外資、というだけでは説明できない特殊要因があるのか。それともポスコはたまたま地雷を踏んだのか?もう少しじっくり調査してみたいと思う。(山田 剛)
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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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