頻発する労働争議の深層

執筆者:山田剛 2011年7月2日
カテゴリ: 国際 政治

 インド国内ではこのところ、自動車や部品関連の工場で労働争議に伴うストライキやロックアウトなどが続発し、生産に大きなダメージを与えている。インドで年間100万台以上の乗用車を生産し、シェア45%を維持するマルチ・スズキでは第2組合結成をめぐって13日間にわたってストが続き、40億ルピー(約72億円)もの損失を出したが、これ以外にも米ゼネラル・モータース・インディアのハロール工場では3-5月の50日間にわたってストが続き、先月には地場大手MRFタイヤのコッタヤム工場も同様の混乱に見舞われた。
  米調査会社JDパワーは先月下旬、こうした騒ぎを予想したかのように「インド自動車産業の生産性の低さは労働争議が原因」と、半ば当たり前の指摘を盛り込んだレポートを発表。インドが小型乗用車の生産ハブになるためにはこうした労働問題の解決が不可欠であるとの見解を示した。
 争議の頻発を受けて自動車業界からも、被雇用者に「手厚い」インド労働諸法の見直しや、会社側の権利を定めた条項(たとえば、複数ある組合のどこを交渉相手とするか、など)の正しい運用を訴える声が上がり始めた。悪名高い「1947年産業紛争法第5章-B」は、「100人以上の工場労働者を雇用している事業者は、解雇や工場閉鎖などに先立って州政府の許可を得なければならない」と定めている。労働者や組合の反発を心配する州政府はそう簡単に許可を出さず、業績が悪化しても雇用調整ができず、結果として各メーカーが正規雇用に二の足を踏み、契約工でつなごうとするためスキルもなかなか向上しない、というわけだ。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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