饗宴外交の舞台裏 (158)

被災地でナショナルデーを祝ったフランスの冒険

執筆者:西川恵 2011年7月20日
エリア: ヨーロッパ アジア

 3.11以後、各国の駐日大使館はナショナルデーのレセプションを控えてきた。その国にとって最大の祝典だが、震災で日本人が苦心惨憺しているとき不謹慎と受け止められかねないとの配慮からだ。
 例えば英国(4月21日)は中止、イタリア(6月2日)は日本在住イタリア人だけを招いた内輪の集まりにとどめた。いつもは最多の招待者を集める米国(7月4日)も規模を縮小した。
 そうした自粛ムードの中、フランスは革命記念日の7月14日、1400人を招いた大々的なレセプションを催した。それも会場は例年のように東京都港区の大使公邸ではなく福島県郡山市内を選んだ。しかも招待者の半数は東日本大震災と原発事故の被災者だった。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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