ナゾが残る、公開されたペンタゴン文書の11語

春名幹男
執筆者:春名幹男 2011年7月24日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 北米 ロシア

 先月、米政府から公式に文書公開された「国防総省機密文書(ペンタゴン・ペーパーズ)」。ベトナム戦争の歴史的秘密を記したこの文書、40年前にダニエル・エルズバーグ博士がニューヨーク・タイムズ紙に漏洩し、報道、出版されたものであり、政府による公表は形式的なこと。新たな問題などない、と思っていた。
ところが、その公開の仕方をめぐる政府の意図について、関係者の間で、新たに別の議論が起きている。
実は、こんな奇妙なことが起きていたのだ。
米国立公文書館は今年5月26日、ペンタゴン・ペーパーズは「11語を除いて」すべて公表される、といったん発表した。しかし、6月13日に公表された文書には、伏せ字にされた11語などどこにも見あたらなかったのである。
実は、公表前にジョンソン大統領図書館のスタッフがチェックしたところ、問題の個所は1971年に下院軍事委員会が公表したバージョンで既に公表済みであることが分かった。このため国家機密解除センター(NDC)は全文公開を決定したのだという。
だが、問題個所がどこで、何が書かれているのか――については、一切明らかにされないままになっている。このため、だれが何をなぜ、いったん「非公開」と決めたのか、と話題になっているというのだ。
有力な候補は次の2つ、と民間調査機関、国家安全公文書館のジョン・プラドス上級研究員は指摘している。
①世界最大の盗聴機関、国家安全保障局(NSA)が1967年にソ連首脳、コスイギン首相とブレジネフ書記長の電話会話を盗聴していた、という個所。
②1964年のトンキン湾事件の際の偵察に関する情報。
プラドス氏は後者の可能性の方が大きいとみている。
いずれもNSA絡みの情報だ。やはり、NSAは既にバレていることでも、可能な限り隠すという、隠蔽体質から抜け出せないようだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男
春名幹男 1946年京都市生れ。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒業。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授を経て、現在、早稲田大学客員教授。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『スパイはなんでも知っている』(新潮社)などがある。
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