外資へ小売市場開放、付帯条件厳しく期待外れか

執筆者:山田剛 2011年8月2日

 外資に対する「マルチブランド・リテール」つまり、スーパー、百貨店など大型小売店出店の解禁の是非を協議していた関係省庁次官委員会(CoS)は7月下旬、条件付きで51%までの外資参入を認めることでほぼ合意。これにより、米ウォルマートや仏カルフールなどが直接投資によってインドで本格的な店舗展開に乗り出すとの期待が高まった。だが、予想されていたとはいえ、肝心の「付帯条件」がかなり厳しいものになりそうなことから、インド政府が待ち望んだ小売市場への外資ラッシュは期待できそうにないとの見方が強まっている。
 CoSが大型小売店事業に参入する外資に課すことを検討している条件は、①最低投資額は1億ドル②出店は人口100万人以上の都市に限定③投資額の50%以上を農村部の倉庫や農道などのいわゆるバックエンド・インフラに投資する④売り上げの30%は零細商店向けとする⑤販売する工業製品の30%以上を中小企業から仕入れる⑥出店の許認可にあたっては各州政府に強い権限を与える―――などとしており、農民や中小・零細の流通業者、メーカーを強力に保護するとともに、一部の州で政権を握る野党にも配慮した内容となっている。
 今後、小売市場開放に関するガイドラインは政府の閣僚委員会で正式決定され、通達となって発表されるが、外資に課す条件が大幅に緩和される見込みは小さい。
 条件の中身は違うが、その精神は何やら日本のかつての大規模小売店舗法にも通じる。これを踏まえ、現地の有力英字経済紙ビジネス・スタンダードはいち早く世界の有力小売業25社への緊急取材を実施し、その多くから「インドへの進出は急がない」とする消極的な回答を引き出している。
 世界同時不況の余韻もさることながら、外資への規制緩和が期待していたほど進まなかったことから、2010年度の対印海外直接投資は前年を約25%下回る194億ドル余りにとどまった。すでに「現金卸」のステイタスでインドに出店しているウォルマートなどは「それでもインド市場に進出したい」と考えるかもしれないが、世界中の小売業を一斉にひきつけるような条件にはなっていない。今回の規制緩和は再びインドへの外資流入を活発化させるチャンスとみられていたが、やや雲行きが怪しくなってきたような気がする。                                                   (山田 剛)

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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