セルビアで生まれた「携帯電話屋外充電所」

執筆者:大野ゆり子 2011年8月4日
タグ: 日本
エリア: ヨーロッパ
携帯電話屋外充電所で寛ぐ親子
携帯電話屋外充電所で寛ぐ親子

「世界中で毎日、いったい何台の携帯電話が充電されるんだろう」。5年前、17歳だったセルビア人高校生ミロシュ・ミリサヴリェヴィッチ君は、ふと考えた。1台だったらば、たいした電力消費ではない。しかし現実には、地球上の全員がそう考えて、世界中で数十億台もの携帯が充電されている。その電力量だけでも、大変なものだ。そのわりに、「肝心なときに限って、携帯電話が外で電池切れになって困った!」という思いは誰もが経験している。必要なときに外出先でいつでも充電でき、しかもその電力を再生エネルギーで賄う――どうにかして、この2つの課題を同時に解決する名案はないだろうか?    考え続けた高校生は、ベオグラード大学の電気工学科に進学し、機械工学、建築学の学生仲間9人と、「ストロベリー・ツリー」というプロジェクトグループを結成。メンバーそれぞれが専門知識を生かし、学業の傍ら、週2、3回のミーティングを繰り返して、世界初の太陽光発電による「携帯電話屋外充電所」を作り上げた。セルビア共和国の首都ベオグラードから、約30キロ南西に位置するオブレノヴァッツ市で誕生した、この「携帯電話屋外充電所」は評判になり、優秀な環境プロジェクトに対して欧州連合(EU)が与える「再生可能エネルギー賞エネルギー消費部門」で、309あったプロジェクト候補の中から選ばれ、今年5月、最高の賞を受賞した。EU域外のセルビア共和国、しかも22歳の大学生グループの受賞は、ヨーロッパでも大きな話題となった。その評判で、「携帯電話屋外充電所」は、今後数年内にセルビア国内ほか、数カ所で新たに設置されていく見込みだ。

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執筆者プロフィール
大野ゆり子(おおのゆりこ) エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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