原発を輸出してはいけないのか

執筆者:豊川博圭 2011年8月18日

 東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、「反原発」は錦の御旗、山本七平言うところの日本社会を支配する空気になった。確かに電力会社と経済産業省、原子力安全委員会ほか原子力村の勘違いと罪は目に余るものがある。しかし「反原発なら何でもOK」という思考停止は、日本の安全保障と国益を危うくしかねない。

立地町長の叫び

「遠くにいて『脱原発』なんて言っている人、おかしいと思う」。停止中の福島第二原発が立地する福島県双葉郡楢葉町の草野孝町長は、雑誌のインタビューでこう本音を漏らした。これに対しネット世論は批判であふれかえった。「カネ欲しさに原発を誘致した加害者が何を言っているのだ」などである。
 筆者はそこまで単純に割り切れない。ふと、原発関係者との雑談の中で聞いた言葉を思い出していた。筆者が日本経済新聞社で福井支局長をやっていた時のことだ。
「反原発運動の人たちが関西からたくさん福井に来ます。彼らは原発を悪く言うだけではなく、原発を誘致した福井も悪く言います」。その関係者は「もちろん批判するのは自由だと思いますよ」と言った後にこう続けた。「でも彼らが大阪から福井に乗ってきた電車は、若狭湾の原発でつくった電気で動いてるんですよね」。
 消費地から見た原発問題と立地地域から見た原発問題は、同じテーマでも全く違って見える。「危険な施設を受け入れやがった」と「迷惑施設を引き受けてあげた」。「莫大なカネを立地地域に落としてやっている」と「原発に依存しないと自立できない地域にさせられた」。同じテーマなのに双方とも被害者意識が先に出る。いずれの立場も100%間違いではないが100%の真実でもない。
 本稿は原発反対派からも原発推進派からもダメ出しを食らう可能性が高い。しかし感情論を抑えて最後まで読んでいただければありがたい。

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執筆者プロフィール
豊川博圭 1961年兵庫県生れ。83年、東京大学農学部農芸化学科卒業、同年4月、日本経済新聞社入社。東京本社編集局科学技術部を中心に、医療、情報、環境、エネルギー、原子力、科学技術政策などを取材。97年から2000年福井支局長。2000年から科学技術庁記者クラブ担当。01年、同社退社。
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