モトローラ買収は「勝者グーグル」の終わりの始まりか

執筆者:新田賢吾 2011年8月29日
エリア: 北米
モトローラ買収の成否は?(グーグルのCEOで共同創業者のラリー・ペイジ氏)(c)EPA=時事
モトローラ買収の成否は?(グーグルのCEOで共同創業者のラリー・ペイジ氏)(c)EPA=時事

 検索エンジンで独走する米グーグルが、米通信機器メーカー、モトローラの携帯端末部門を125億ドル(約9700億円)で買収することを決めた。グーグルはスマートフォンのOS(基本ソフト)、「アンドロイド」を世界のエレクトロニクスメーカーに無償で供与、「iPhone」でスマートフォン市場を拡大させたアップルに対抗する陣営を築いている。モトローラの携帯端末部門買収はアンドロイドの普及をさらに加速し、モバイル分野でも主導権を握る戦略であることは明らかだ。だが、ネット上のサービスで急成長したグーグルと、ハードウエアの開発・設計・生産を一貫体制で行なってきたメーカーであるモトローラは、企業の体質、性格がまったく異なる。グーグルにとってモトローラ買収は、キャッシュの浪費で終わるか、グーグル自らの変質による衰退を招くかの両方のリスクを抱えている。  グーグルとモトローラほど大きく異なる企業の組み合わせも珍しい。グーグルはインターネット上で検索エンジン、地図、ニュース、メール、動画配信、翻訳、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを提供し、広告料を主な収益源とする企業。1998年の創業からまだ13年しかたっていないが、株価時価総額ではすでに全米トップを競う巨大企業だ。  一方のモトローラは1928年創業の名門通信機器メーカーで、かつては強力な政治力を武器に自社開発した技術規格を標準化採用させたり、中国市場にいちはやく乗り込んだりと政商的な性格を持つ企業だった。90年代には66個の衛星で、地球全体をカバーする衛星携帯電話サービス、「イリジウム」に乗り出したが、地上の携帯電話の普及によって大失敗し、イリジウムの経営は破綻した。全体としてみれば、衰退期のメーカーであることは否定できない。グーグルとは「鳥」と「魚」のように住む世界が異なる企業といってよいだろう。経営トップの論理や従業員、株主の意識もかけ離れている。

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