バイデン訪中の教訓――米国の迷走で増す中国の影響力

執筆者:渡部恒雄 2011年9月1日
カテゴリ: 国際
エリア: 北米

 米国は8月1日に、債務上限を2兆1000億ドル(約161兆円)引き上げる財政健全化法案を議会で可決した。しかし、国内の民主党と共和党の妥協なき政治対立は、先進国としては異例の債務不履行(デフォルト)の一歩手前までいく迷走ぶりを見せ付けた。これにより、世界の市場や各国政府の間に、米国の財政のコントロールに対する不安感が広がった。8月5日には、格付け会社S&Pは米国債の長期格付けを最上位の「トリプルA」から、「ダブルAプラス」に1段階引き下げ、世界同時株安まで引き起こした。

 このような中で、米国の最大の債権国である中国の影響力がじわりと増している。
 バイデン副大統領は、8月17日から24日にかけて、中国、モンゴル、日本を訪問したが、中国訪問では米国債の安全性を訴えることが最重要課題となった。バイデン副大統領は、会談した中国のリーダーに、中国が買い支えている1兆2000億ドルの米国債は安全であると伝えた。これを受けて、中国側も期待に応える発言をした。
 中国の次期リーダーとなる習近平副主席は、「米国経済は大変に回復力のあるもの(resilient)」とし、温家宝首相もバイデン副大統領との会談で「米国経済は、その難しい課題にうまく対処することで、より良い経済発展を達成できると信じている」と発言した。バイデン副大統領は中国の米国債の保有に感謝し、中国からの投資を歓迎すると答え、世界の経済成長に対して、米中両国が責任を持つということを強調した。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄 わたなべ・つねお 東京財団上席研究員。1963年生れ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士号を取得。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政党政治、外交政策、日米関係などの研究に携わる。05年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て現職。著書に『「今のアメリカ」がわかる本』など。
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