野田政権構想になぜか書きこまれた「高位スタッフ職の整備」

原英史
執筆者:原英史 2011年9月2日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

野田新総理の『政権構想』では、「行政改革」「公務員制度改革」という項目が掲げられている。2日、これらの担当大臣として蓮舫大臣が任命された。
 
大いに頑張ってほしいとの期待を込めつつ、『政権構想』の中で、気になる点を2つ指摘しておきたい。
 
第一に、「行政改革の断行」として、「仕分けの継続・強化」が柱とされている点だ。
前回エントリーでも少し触れたが、事業仕分けは、すでに限界が露呈している。
事業仕分けで「廃止」「凍結」などと結論が出ながら、いつの間にか復活とか、似たような事業として再生、といったケースが頻発している。
例えば、政権交代直後の第一回事業仕分けで「凍結」とされた、国家公務員宿舎の建設は、その後、野田財務大臣のもとで一部再開が決定され、9月1日、朝霞宿舎の建設が着工された。
こうした問題への対応をしないまま、ただ「仕分けを継続」しても、厳しい言葉でいえば、「改革をしているふり」だけになりかねない。
 
第二に、「公務員制度改革(天下り根絶)」という項目で、「高位スタッフ職の整備」というフレーズがもぐりこんでいる点。
「高位スタッフ職」などと言われても、ふつうは、何のことだか分からないし、どうして問題なのかも理解できないと思う。
これは、霞が関で以前から検討されている、いわば高級窓際ポストを作ろうという構想だ。
 
例えば、局長をつとめた人は、これまでは、事務次官まで上り詰める一人を除いて、退官して天下りしていた。この構想によると、天下りの代わりに、「局長級のスタッフ」として、局長相当(多少給与が下がるにせよ)の待遇で、役所に残ることもできるようになる。
 
そもそも、組織でポストを作るときは、ふつう、必要な仕事に対応するために作る。だが、この「高位スタッフ職」構想は、「必要な仕事」があって出てきた話ではない。「幹部相当の処遇」を目的にポストを作ろうという、もとから本末転倒な話なのだ。
 
だから、これまでも、「高位スタッフ職」という話は、何度か浮上しては、マスコミや国会での批判を浴びて、実現に至らず宙ぶらりんになってきた。
その構想が、なぜか、野田氏の『政権構想』には盛り込まれた。
代表選の公約として掲げた以上、おそらく新政権において、実現に向けて取り組むことになるのだろう。
 
だが、野田氏は、なぜこんなことを『政権構想』に書きこんだのかは、よく分からない。
『政権構想』としてわざわざ掲げるような事項とは、到底思えないのだ。
あるいは、本人が自ら書いたわけではなく、「高位スタッフ職」実現をずっと狙っていた官僚たちの手によるのでないか・・というのは勘繰り過ぎだろうか。
 
(原 英史)
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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