インテリジェンス・ナウ

ソマリアにまで「グアンタナモ」を作ったオバマの秘密戦争――9.11テロから10年

執筆者:春名幹男 2011年9月9日
タグ: CIA
ビンラディン殺害計画の一翼を担った米空軍の無人偵察機「プレデター」[米空軍提供](C)時事
ビンラディン殺害計画の一翼を担った米空軍の無人偵察機「プレデター」[米空軍提供](C)時事

 2001年の米中枢同時多発テロからちょうど10年が経過した。この間、米中央情報局(CIA)の任務が大きく変わった。情報収集と分析、秘密工作が従来からの主要な任務だったが、それに「準軍事作戦」という新たな仕事が加わったのである。  CIAの準軍事作戦とは、ヘルファイアー空対地ミサイルを搭載した無人偵察機プレデターなどを使ってテロ組織のアジトを攻撃する作戦である。この準軍事作戦は別名「動力的工作」とも呼ばれている。  米紙ワシントン・ポストによると、CIAはこの作戦でこれまでに世界各地で、2000人以上を殺害した。その中には、テロ容疑者のほか、誤爆によって殺された一般人も含まれている。  これに伴いCIA対テロセンター(CTC)の要員は9.11テロ前の300人から現在は2000人に急増、CIA全体のスタッフの約10%を占めるに至った。  それだけではない。スパイ機関としてのCIAの性格まで変わろうとしている。CIAは本来、文民の組織だが、軍との境界があいまいになりつつあるのだ。同紙によると、これに伴い情報分析部門にまで変化が見られ、現在では同部門の約20%もがテロ容疑者を①リクルート対象②身柄拘束対象③無人偵察機の攻撃目標――に分類する仕事に従事するようになった。現在CIAが保有する無人機はプレデターなど約30機に上り、無人機の管理運用がCIAの主要な任務に成長した。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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