タイ新政権――「政治主導」と大企業による支持表明

樋泉克夫
執筆者:樋泉克夫 2011年9月12日

 8月10日の発足から1カ月が過ぎた9月10日、タイのインラック首相はブルネイを皮切りにインドネシア、カンボジア、ラオスのASEAN4カ国を初訪問して外交デビューを果たし、政権は試運転段階から本格始動に向け動きだしたようだ。

 この間、新政権のみならずタイの今後を占う意味で興味深い動きがみられた。

 第1が、数年来、過激なタクシン支持運動を展開してきた中央・地方の赤シャツ陣営指導者の多くが8月末に内閣の政治職に任命されたことだ。昨春、彼らがバンコクの繁華街を占拠し流血の事態を招いたことは知られたところだが、積極果断な対応を取れず徒に事態を紛糾させたことが前アピシット政権と国軍への国民的不信感を招き、今回の政権交代をもたらしたとも言われるだけに、「論功行賞人事」と批判する声が起こるのも無理からぬことだろう。

 彼ら赤シャツ陣営幹部が就任した主なポストを挙げると、国防、外交、労働、内務、交通、商務、教育、天然資源・環境、情報・情報技術、エネルギー、安全・社会発展などの各大臣顧問、秘書官、大臣補佐官などに加え首相府政務官が10人。政権運営の実働部隊といってもよさそうだ。さらにいうなら、その少なからざる部分が、これまでのタイを支えてきたABCM複合体、つまりA(王室)・B(官僚)・C(資本家)・M(国軍)を軸とした「守旧勢力」に対して強い不信を表明しつつ批判運動を展開してきた活動家なのだ。であればこそ、インラック政権の今後は赤シャツ陣営の「政治主導」によって左右されることは十分に考えられる。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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