国際論壇レビュー
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9.11から10年――あの日から世界はどう変わったか

会田弘継
執筆者:会田弘継 2011年9月16日
カテゴリ: 国際
エリア: 中東 北米
アメリカと世界に大きな衝撃を与えた(c)AFP=時事
アメリカと世界に大きな衝撃を与えた(c)AFP=時事

 9.11テロから10年。ニューヨークは「あの日」と同じように晴れわたった。崩れ落ちた世界貿易センタービルの跡地「グラウンド・ゼロ」。そこで行なわれた犠牲者追悼式典には、オバマ大統領とブッシュ前大統領がともに参列した。ビル跡地に造られた巨大な人工池を囲んで置かれた銅板には、犠牲となった3千人近い人の名が刻まれ、はじめて公開された。愛した夫や妻、子や親の名をなぞって泣き崩れる遺族たち……。犠牲者には日本人24人がいたことも忘れてはなるまい。  あれからの10年を、どう考えたらいいのか。あの日から世界はどう変わったのか。アメリカ、そして世界のメディアと論客は、さまざまな視点を伝えている。

10年ではまだ分からない

「ニューヨーク・タイムズ」紙は「喪失と希望」と題した社説で、あの日からのアメリカを次のように総括する。9.11の朝の悲惨な出来事で、アメリカ人は否応なく、それまでとは「別の世界」に入ってしまった。それはアメリカ人が「より大きく」なれる転機ともなり得るはずだった。ところが、誤った戦争へと導かれて多くの人命を失い、財を浪費し、国の基盤をなす市民の権利の一部さえ失った。国の理想を裏切るような外国人排斥のムードも出るようなありさまだ。
 でも、「アメリカ人はまだ9.11の出来事から学びつづけているのだ。結果を評価するのに10年は短い。あの朝、衝撃とともに抱いた人々への思いやり、希望。そこにこそ本当の意味があったと、いつか分かる日がくるかもしれない」。苦い、苦い10年だったということだ。 【Loss and Hope, The New York Times, Sept. 10】
「ウォールストリート・ジャーナル」紙の論説副主幹ブレット・スティーブンスは、真珠湾攻撃から10年目の1951年12月7日(米時間)、当時のトルーマン大統領はフロリダで休暇をとり、副大統領はホノルルで朝鮮戦争について講演、週刊誌タイムには真珠湾のことなど1行も載っていなかったと指摘する。51年には、第2次大戦はすっかり過去のものになっていた。だが、「9.11に始まった戦争は依然として終わらない。まだ物語の始まりなのか、それとも半ばなのか、終章に入ったのか。いったい、同じ物語がまだ続いているのか、それさえ分からない……9.11の記憶は10年たっても、まだその『意味』が定まらない」。 【9/11 and the Struggle for Meaning, The Wall Street Journal, Sept. 6】
 進歩派とみなされる「ニューヨーク・タイムズ」紙と保守派の「ウォールストリート・ジャーナル」紙から、期せずして似たようなトーンの論調が出た。アメリカ知識人らがいま抱いている思いが伝わってくる。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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