順調な滑り出しを見せたペルーの左派政権

執筆者:遅野井茂雄 2011年9月30日
エリア: 中南米

 去る6月の大統領選挙でケイコ・フジモリと接戦の末、3%の僅差で勝利したウマラ政権が7月28日発足した。ペルー史上初めて、選挙で社会主義勢力が合流した左派政権の誕生である。高成長を維持しながら成長の成果を社会にあまねく及ぼす「社会的包摂をともなう成長」を目標とした政権の発足である。

 新政権の発足に当たっては、鉱山への課税強化など投資環境の悪化を懸念して株式市場にも動揺が広がっていたが、新大統領は、政権発足に先立ち、内部の反発を抑え、経済運営の要の経済財政大臣に前政権で同副大臣を務めたルイス・カスティジャを起用、また中央銀行総裁には保守派のベラルデ総裁の続投を決定し、財政規律を重んじ投資を促進する経済政策の継続をアピールして、ひとまず市場の信認を得た。この人選は、国際機関とくにアンデス開発公社(CAF)総裁の示唆と現地専門筋では指摘されている。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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