東南アジア共産勢力による反政府武装闘争史の最終章

樋泉克夫

 かつて東南アジア各国において、北京の支援を受けた武装勢力の反政府活動は極めて活発に展開され、長い間、国政上の最大懸案となっていた。その代表例が、カンボジアをキリング・フィールドに変貌させたポル・ポト派といえるだろう。1970年代半ば以降、東南アジア各国政府が中国と国交を正常化する過程で問題となったのが、北京が支援する自国内で活動を続ける反政府武装勢力の取り扱いだった。 

 たとえば東北部の森林地帯に根拠地を設け反政府武装活動を展開していたタイ共産党対策に苦慮していたタイ政府は、70年代末、タイを訪問した鄧小平に対しタイ共産党への支援を控えるよう申し出ている。だが、鄧小平は「党と党の関係は、国家と国家の関係に優先する」と応えタイ政府の申し出を拒否し、タイ共産党への支援を継続することを内外に明らかにしている。

 ところが80年代に入り北京が改革・開放政策を強力に推進する進展する過程で、北京は支援のバルブを絞っていった。当時、カンボジアやビルマの共産党で活動していた華人系活動家の回想録には、各国共産党幹部を北京に呼びつけ援助打ち切りを非情にも言い渡す北京首脳の姿が苦々しく記されている。北京が「国家と国家の関係を、党と党の関係に優先させた」ことで、各国共産党の息の根は止められたのだ。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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