先住民との対立が深まる「ボリビア・先住民政権」のジレンマ

遅野井茂雄
執筆者:遅野井茂雄 2011年10月6日
カテゴリ: 国際
エリア: 中南米

 昨年末のガソリン価格の値上げで支持基盤の先住民や社会運動の抗議行動を招き、政策の撤回を余儀なくされ躓きを見せたボリビアのモラレス政権が(2011年1月23日『曲がり角に立つ急進左派政権(3)ボリビア・モラレス政権の苦境』参照)、今度は道路建設をめぐって再び身内の反発に遭い苦境に陥っている。

 ボリビア史上初の先住民大統領を擁した先住民政権(2006-)は、09年に新憲法で先住民の権利拡大を盛り込み「多民族国家」の樹立を目指している。国際フォーラムでは、先住民社会に継承された「母なる大地(パチャママ)」の思想に立つ独自の環境保護の立場をアピールしてきた。環境破壊の元凶として資本主義を攻撃してきた当のモラレス政権が、コチャバンバ県とベニ県にまたがるイシボロ・セクレ先住民領域国立公園(TIPNIS)を貫通する道路建設を、先住民の反対を押し切って強行しようとして深刻な国内問題に発展したのである(写真は道路建設ルート)。

 TIPNISは、1990年に東部の低地先住民が「尊厳と領域を求める大行進」を行ない、アマゾンのベニ県トリニダから高地の首都ラパスまでの640キロを踏破して、89年のILO(国際労働機関)第169号条約に基づいて先住民の権利を訴え、政府から初めて先住民固有の領域権を勝ち取った場所で、先住民運動における記念碑的領域の1つである。1965年には国立公園に指定されており、先住民と環境保護の二重の意味において象徴的意味をもつ。

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執筆者プロフィール
遅野井茂雄
遅野井茂雄 筑波大学大学院教授、人文社会系長。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(編著)。
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