デンマークの総選挙で中道左派勢力が過半数を占め、社会民主党党首のヘレ・トーニング・シュミットが10月2日、女性として同国初となる首相に任命された。これは、単にこの国の政権が右派から左派へと10年ぶりに移行する以上の意味を持っている。2001年以降右派政権を閣外協力で支えてきた右翼政党「デンマーク国民党」が、ようやく表舞台から退場することになったからだ。
ポピュリスト的傾向の強い女性党首ピア・ケアスゴーの下、95年に結党されたデンマーク国民党は、根強い大衆人気を背景に、自由党主導の右派政権への影響力を強めてきた。その結果、デンマークはこの10年間、差別的と言えるほど厳しい移民排斥政策を次々と実現させた。これに伴って、欧州でのデンマークのイメージも大きく変化した。かつてこの国は、充実した福祉や高い教育水準から「世界で最も暮らしやすい国家」と尊敬されていた。人々はこの国を今、欧州で最も排他的、差別的な国家と見なし、胡散臭そうに眺めている。
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