「国家戦略会議」の成否を握る「法的根拠」と「公開性」

原英史
執筆者:原英史 2011年10月21日
カテゴリ: 政治
エリア: 日本

 

政府は21日、「国家戦略会議」の設置を閣議決定した。
 
重要基本方針のとりまとめ、中長期的な国家ビジョンの構想などを任務とし、議長は総理大臣、副議長に官房長官及び国家戦略担当大臣(兼経済財政担当)のほか、関係閣僚、民間議員などで構成。
これまで乱立していた18会議(新成長戦略実現会議など)は廃止し、「国家戦略会議」に一本化するという。
 
まず、この会議の設置自体は、評価したい。
各省縦割りや官僚主導の壁を乗り越え、思い切った政策を実行していくためには、こうした官邸主導の枠組みが欠かせない。
本来なら、「政治主導」を掲げて政権交代を果たした直後に、真っ先になすべきことだった。
遅きに失したとはいえ、震災復興、国際経済情勢など難題が山積する中で、これから、「国家戦略会議」が果たすべき役割は極めて大きい。
 
その上で、課題を2つ指摘しておきたい。
 
第一に、会議の法的根拠がないことだ。
かつて、類似の会議体として、「経済財政諮問会議」が自公政権下で一時期大いに機能発揮した。
「経済財政諮問会議」は、法律上の位置づけがあり、「経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策」などにつき審議する「法的権限」を有した。
これに対し、今回の「国家戦略会議」は、法律上は今も存在する「経済財政諮問会議」は敢えて脇におき、閣議決定で設置したものだ。
今後、省庁間の対立や抵抗などをはらむ難題に取り組む際、法的根拠がないことは、致命的な欠陥になる可能性がある。
臨時国会で早期に、法制度として位置付けることを検討すべきだろう。
 
第二に、会議の公開がきちんとなされるのかどうか。
「経済財政諮問会議」では、会議の一般傍聴こそ許されなかったが、誰がどういう発言をしたのか、詳細な「議事要旨」が公開され、事実上“ガラス張り”だった。
小泉内閣の頃、「経済財政担当大臣vs各省大臣」といった対立がしばしば話題になったのはこのためだ。
こうした議論の公開は、単に面白おかしい対決構図の報道に価値があるのではない。国民の前に議論がさらされることで、結局、「国民からみておかしくない決着」に向かわざるを得なくなる効果が大きいのだ。
 
今回の「国家戦略会議」での扱いはまだ詳細不明だが、これまで民主党政権では、残念ながら、「会議の公開」に関して大いに問題あるケースが少なくなかった。
一例をあげれば、朝霞公務員宿舎の問題を受けて、10月17日からスタートした「国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会」だ。
この検討会は、一般傍聴もマスコミの傍聴も許されていない。
会議終了後に「議事要旨」が公表されるが、発言のポイントが簡単に列記されるだけ。誰がどういう発言をしたのかさえ不明で、会議の様子はさっぱり分からない。
国民の関心が高いテーマで、甚だ不適切な対応だと思う。
早急な改善を期待するとともに、「国家戦略会議」では間違ってもこんなことのないよう、十分な公開を求めたい。
 
(参考)同じ「議事要旨」といっても、以下の2つを見比べれば、全く異質のものであることが分かるだろう。
 
(原 英史)
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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