ウォール街で儲ける政治インテリジェンス

執筆者:春名幹男 2011年10月22日
タグ: イギリス 日本
エリア: 北米

 「政治インテリジェンス」という言葉があるが、その概念はまだ定着してはいない。
第一次世界大戦末期、イギリス外務省に設置された「政治インテリジェンス部」は、敵・味方双方の政治・経済・軍事情報を分析した報告書を内閣に提出した、と言われる。
しかし、今ウォール街で注目されている政治インテリジェンスはこれとは少し異なる、国内の情報である。まだ決定していない金融改革法の詳細、例えば金融部門のどこがどんな規制を受けるか、といった情報をワシントンで入手し、ウォール街などの金融機関に提供する新手のコンサルタントが出現した、と伝えられている。
そうしたワシントン情報を入手するため、グリーンスパン前連邦準備制度理事会(FRB)議長やスノー元財務長官ら大物を顧問に据える企業もある。ベテランのロビイストから政治情報を定期的に提供してもらい、報酬を支払うヘッジ・ファンドなどもある。
米国では、ロビイストは議会への登録を義務付けたロビイング公開法や司法省への届け出を規定している外国代理人登録法(FARA)がある。ただ、政治情報の提供だけだとこれらの法は適用されないようだ。
日本では今後、恐らく環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に伴う農業保護の施策などが最も注目されるだろう。日本にはロビイスト規制の法律はないから、余計にこの種のビジネスの関係者の顔が見えない。ただ、TPP関連情報は、官僚を通じた情報ルートですぐ漏れ出るのではないか。民主党がその「けものみち」を抑え、「政治主導」を発揮できるかどうか、見ものだ。
 

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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